鈍的卵巣外傷による腹腔内出血の1例

症例は22歳の女性。乗用車を運転中に誤って 5 m下の川に車ごと転落し受傷した。前医で気胸と腹腔内出血と診断され,治療目的で当院に転院となった。腹腔内の出血部位は造影CT検査では不明であった。出血性ショックであり,出血源不明のため経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization; TAE)での止血は困難と判断し,試験開腹術を行った。開腹すると腹腔内には約750mlの血液貯留が認められ,左卵巣内の黄体嚢胞からの出血が持続していたため縫合止血を行った。また,損傷側卵巣に卵巣腫瘍を認めたため摘出した。その他に腹腔内臓器の損傷は認めなかった。術後は良好な経...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 19; no. 1; pp. 16 - 19
Main Authors 近田, 恵里, 佐藤, 朝臣, 石井, 大嗣, 小澤, 修一, 西倉, 哲司, 冨岡, 正雄, 松山, 重成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2008
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.19.16

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Summary:症例は22歳の女性。乗用車を運転中に誤って 5 m下の川に車ごと転落し受傷した。前医で気胸と腹腔内出血と診断され,治療目的で当院に転院となった。腹腔内の出血部位は造影CT検査では不明であった。出血性ショックであり,出血源不明のため経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization; TAE)での止血は困難と判断し,試験開腹術を行った。開腹すると腹腔内には約750mlの血液貯留が認められ,左卵巣内の黄体嚢胞からの出血が持続していたため縫合止血を行った。また,損傷側卵巣に卵巣腫瘍を認めたため摘出した。その他に腹腔内臓器の損傷は認めなかった。術後は良好な経過で軽快退院した。鈍的腹部外傷における腹腔内出血の原因は肝臓・腎臓・脾臓・腸管・腸間膜の損傷によるものが多い。外傷性卵巣損傷は稀な臓器損傷形態であり,画像による確定診断は困難で試験開腹後に確定診断されることが多い。女性の出血源不明の腹腔内出血では,卵巣からの出血も考慮する必要がある。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.19.16