対麻痺および腹痛にて発症した特発性多発性コレステロール結晶塞栓症の1例

症例は57歳の男性。急激な上腹部痛・両下肢の麻痺を主訴に救急搬送された。来院時の意識状態は清明,バイタルサインは血圧193/103mmHg,体温34.0℃,脈拍76/分・整,呼吸数20/分,SpO2 98%(room air)であった。搬入時の所見でデルマトームTh(thoracic level)8以下の感覚障害,対麻痺,腹壁の網状皮斑,下肢末梢の冷感を認めた。血液検査で膵臓由来のアミラーゼ上昇(338 IU/L),胸椎核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging; MRI)にてTh7-8レベルの脊髄にT2強調画像で高信号域を認めた。急性膵炎および脊髄梗塞の診断で同日...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 11; pp. 839 - 845
Main Authors 鈴木, 慧太郎, 鍜冶, 有登, 栗原, 敦洋, 西野, 栄世, 篠崎, 正博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2014
Subjects
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.25.839

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Summary:症例は57歳の男性。急激な上腹部痛・両下肢の麻痺を主訴に救急搬送された。来院時の意識状態は清明,バイタルサインは血圧193/103mmHg,体温34.0℃,脈拍76/分・整,呼吸数20/分,SpO2 98%(room air)であった。搬入時の所見でデルマトームTh(thoracic level)8以下の感覚障害,対麻痺,腹壁の網状皮斑,下肢末梢の冷感を認めた。血液検査で膵臓由来のアミラーゼ上昇(338 IU/L),胸椎核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging; MRI)にてTh7-8レベルの脊髄にT2強調画像で高信号域を認めた。急性膵炎および脊髄梗塞の診断で同日集中治療室に入院となった。入院3時間後の血液検査でCPK(creatine phosphokinase)が急激に上昇し,BUN(blood urea nitrogen),クレアチニン,アミラーゼも徐々に上昇した。無尿が続き,入院9.5時間後に持続血液透析を開始した。入院12時間後に呼吸・循環動態の急激な悪化のため,人工呼吸器を導入し,ドーパミンを開始したが状態は改善せず,入院2日目に多臓器不全のため死亡した。剖検で粥腫性大動脈硬化症,多臓器の細動脈にコレステロール結晶による塞栓を認め,粥状硬化巣の破綻による多発性コレステロール結晶塞栓症と診断した。本疾患では早期診断に組織診が必要であるが,予防法や治療法は確立されておらず,今後の課題である。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.25.839