術後対麻痺を合併した腹部大動脈瘤術後の感染性吻合部動脈瘤の1例

腹部大動脈瘤術後の感染性吻合部動脈瘤に対す手術後に対麻痺をきたした症例を経験したので報告する.症例は63歳女性.腹痛を主訴に腹部大動脈瘤切迫破裂の診断下,緊急手術を施行し退院となった.その半年後,腹痛,下血を主訴に吻合部動脈瘤の診断下,緊急再手術を施行した.この際,人工血管近傍に膿を認めたため,急処,非解剖学的再建を行ったが,術後対麻痺をきたした.腹部大動脈領域での本合併症の発生はきわめて稀で,その予後は不良である.予防には脊髄への側副血行路温存の目的で内腸骨動脈の再建などの対策が必要であるとされている.本症では内腸骨動脈を再建したにもかかわらず虚血時間の延長によると思われる対麻痺を合併した....

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 39; no. 1; pp. 37 - 40
Main Authors 塚本, 三重生, 長, 伸介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2010
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.39.37

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Summary:腹部大動脈瘤術後の感染性吻合部動脈瘤に対す手術後に対麻痺をきたした症例を経験したので報告する.症例は63歳女性.腹痛を主訴に腹部大動脈瘤切迫破裂の診断下,緊急手術を施行し退院となった.その半年後,腹痛,下血を主訴に吻合部動脈瘤の診断下,緊急再手術を施行した.この際,人工血管近傍に膿を認めたため,急処,非解剖学的再建を行ったが,術後対麻痺をきたした.腹部大動脈領域での本合併症の発生はきわめて稀で,その予後は不良である.予防には脊髄への側副血行路温存の目的で内腸骨動脈の再建などの対策が必要であるとされている.本症では内腸骨動脈を再建したにもかかわらず虚血時間の延長によると思われる対麻痺を合併した.術後対麻痺を予防する上で,内腸骨動脈などからの脊髄に対する側副血行路の虚血時間を短縮することが重要であり,術中の術式変更などにより虚血時間が長くなる可能性がある場合,下肢,および脊髄保護という観点から,なるべく早い時点でまずはバイパスを行い血流を確保することが重要と考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.39.37