肝蛭症の1例

症例は24歳,ベトナム人女性.来日から2カ月経過した頃,発熱・右季肋部痛を自覚し,当院受診となった.血液検査にて,肝胆道系酵素の軽度上昇と白血球増多を認め,そのうち好酸球が67.4%と著明な増多を認めた.腹部造影CT検査では,肝外側区の表面から肝実質内に連続する管状,多結節状の囊胞性病変の多発を認めた.好酸球優位の白血球増多より,何らかの寄生虫感染症が考えられ,虫卵検査を行ったが,糞便からは虫卵は認められなかった.しかし,抗寄生虫抗体スクリーニング検査の結果にて,肝蛭抗原に対する陽性反応が極めて強く,臨床経過と併せて肝蛭症の診断に至った.プラジカンテル(praziquantel;PZQ)内服開...

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Published in肝臓 Vol. 61; no. 11; pp. 607 - 612
Main Authors 竹内, 真実子, 山中, 裕貴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 01.11.2020
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.61.607

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Summary:症例は24歳,ベトナム人女性.来日から2カ月経過した頃,発熱・右季肋部痛を自覚し,当院受診となった.血液検査にて,肝胆道系酵素の軽度上昇と白血球増多を認め,そのうち好酸球が67.4%と著明な増多を認めた.腹部造影CT検査では,肝外側区の表面から肝実質内に連続する管状,多結節状の囊胞性病変の多発を認めた.好酸球優位の白血球増多より,何らかの寄生虫感染症が考えられ,虫卵検査を行ったが,糞便からは虫卵は認められなかった.しかし,抗寄生虫抗体スクリーニング検査の結果にて,肝蛭抗原に対する陽性反応が極めて強く,臨床経過と併せて肝蛭症の診断に至った.プラジカンテル(praziquantel;PZQ)内服開始となり,腹痛及び血液検査所見は改善したが,画像所見では,自覚症状や血液検査所見とは乖離する肝・肝外病変の増大を認めた.肝蛭症の治癒を知る上で非常に興味深い症例と考えられたので,報告する.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.61.607