腹部大動脈ステントグラフト内挿術後に遅発性対麻痺を発症した腎動脈下腹部大動脈瘤の1例

症例は83歳,男性.腎動脈下腹部大動脈に50 mm大のAAAを認め,全身麻酔下にEVARを施行した.瘤から腎動脈分岐部までの中枢neck長が約10 mmと短かったが,腎動脈分岐部直下からステントグラフト(Endurant II)を留置し,endoleakなく手術終了となった.全手技を通して,平均血圧(MAP)はおおむね60 mmHg以上で経過し,カテーテル操作中のACTは240秒以上であった.術後,手術室で抜管し,四肢麻痺がないことを確認した.ICU帰室から約5時間後,両下肢の麻痺が出現したため,緊急で昇圧,脊髄ドレナージ,ステロイド投与などを行ったが,明確な改善には至らなかった.EVAR後の...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 50; no. 2; pp. 106 - 109
Main Authors 中村, 嘉伸, 仁井, 陸冬, 齋藤, 雄平, 石黒, 眞吾, 添田, 健, 池田, 陽祐, 角, 尚紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.03.2021
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.50.106

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Summary:症例は83歳,男性.腎動脈下腹部大動脈に50 mm大のAAAを認め,全身麻酔下にEVARを施行した.瘤から腎動脈分岐部までの中枢neck長が約10 mmと短かったが,腎動脈分岐部直下からステントグラフト(Endurant II)を留置し,endoleakなく手術終了となった.全手技を通して,平均血圧(MAP)はおおむね60 mmHg以上で経過し,カテーテル操作中のACTは240秒以上であった.術後,手術室で抜管し,四肢麻痺がないことを確認した.ICU帰室から約5時間後,両下肢の麻痺が出現したため,緊急で昇圧,脊髄ドレナージ,ステロイド投与などを行ったが,明確な改善には至らなかった.EVAR後の対麻痺は非常に稀な合併症ではあるが,その可能性を念頭に置いた慎重な周術期管理が必要であると考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.50.106