左頭頂葉病変の一例における運動覚性音読の障害

視覚を介する音読や書字再生 (写字) は保たれ,運動覚を介する音読や書字再生が障害された69歳,右利き左頭頂葉病変例 TO を報告した。TO においては,運動系,感覚系が保たれ,文字の運動覚心像,視覚心像,聴覚心像自体もほぼ保存されているにもかかわらず,与えられた文字の運動覚刺激に対応する文字の心像が十分に喚起されないという,離断というべき現象が生じていることが推測された。左頭頂葉病変により,体性感覚様式特異的な連合の障害と,文字の異種感覚様式間の連合の障害とが引き起こされたものと解釈した。...

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Published in失語症研究 Vol. 18; no. 2; pp. 154 - 161
Main Authors 柏木, 敏宏, 中川, 賀嗣, 井堀, 奈美, 田辺, 敬貴, 柏木, あさ子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会) 1998
Subjects
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ISSN0285-9513
1880-6716
DOI10.2496/apr.18.154

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Summary:視覚を介する音読や書字再生 (写字) は保たれ,運動覚を介する音読や書字再生が障害された69歳,右利き左頭頂葉病変例 TO を報告した。TO においては,運動系,感覚系が保たれ,文字の運動覚心像,視覚心像,聴覚心像自体もほぼ保存されているにもかかわらず,与えられた文字の運動覚刺激に対応する文字の心像が十分に喚起されないという,離断というべき現象が生じていることが推測された。左頭頂葉病変により,体性感覚様式特異的な連合の障害と,文字の異種感覚様式間の連合の障害とが引き起こされたものと解釈した。
ISSN:0285-9513
1880-6716
DOI:10.2496/apr.18.154