大腸鋸歯状腺腫症による同時性10多発大腸癌の1例

症例は69歳,女性.主訴は右下腹部痛であった.腹部造影CTで上行結腸に進行癌を認め,紹介となった.下部消化管内視鏡検査を施行したところ,上行結腸肝彎曲部に内視鏡が通過困難な2型進行癌を認めた.横行結腸にポリープを6病変認め,EMRを施行した.横行結腸のポリープは,2病変は高分化管状腺癌の増生を認める粘膜内癌であり,鋸歯状腺腫が混在していた.残り4病変は鋸歯状腺腫であった.進行癌に対しては腹腔鏡補助下右半結腸切除術(D3郭清)を施行した.切除標本には8病変認め,いずれも大腸癌であった.術前のEMRの病変と合わせて,4多発鋸歯状腺腫,10多発大腸癌であった.大腸癌の10病変のうち6病変は鋸歯状腺腫...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 8; pp. 1556 - 1562
Main Authors 小林, 弘典, 久原, 佑太, 白川, 賢司, 豊田, 和宏, 久保田, 晴菜, 平原, 慧
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.81.1556

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Summary:症例は69歳,女性.主訴は右下腹部痛であった.腹部造影CTで上行結腸に進行癌を認め,紹介となった.下部消化管内視鏡検査を施行したところ,上行結腸肝彎曲部に内視鏡が通過困難な2型進行癌を認めた.横行結腸にポリープを6病変認め,EMRを施行した.横行結腸のポリープは,2病変は高分化管状腺癌の増生を認める粘膜内癌であり,鋸歯状腺腫が混在していた.残り4病変は鋸歯状腺腫であった.進行癌に対しては腹腔鏡補助下右半結腸切除術(D3郭清)を施行した.切除標本には8病変認め,いずれも大腸癌であった.術前のEMRの病変と合わせて,4多発鋸歯状腺腫,10多発大腸癌であった.大腸癌の10病変のうち6病変は鋸歯状腺腫が混在しており,鋸歯状腺腫が発生母地となったserrated pathwayの発生経路が考えられた.残りの4病変も同様の発生経路が推測された.以上から,自験例は大腸鋸歯状腺腫症による同時性多発大腸癌の1例であった.大腸鋸歯状腺腫症は高率に大腸癌を合併するので,今後も慎重なサーベイランスが必要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.1556