特発性後腹膜出血により腹部コンパートメント症候群を来した一例

症例は61歳,女性。副腎不全によるショックで入院中,遷延する凝固能異常を背景に明らかな誘因なく特発性後腹膜出血を発症した。出血性ショックとなり凝固能異常の補正と経皮的動脈塞栓術を行った。処置後,膀胱内圧が19 mmHgと高値だったが,腹腔内圧上昇による明らかな臓器障害は認めず,いつでも手術を施行できる体制下で内科的治療を継続とした。以後循環動態は安定化したが,2日後急性腎傷害,循環不全が進行し腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome, ACS)に至ったため,緊急開腹減圧術を施行した。その際,後腹膜ガーゼパッキングとopen abdomen man...

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Published in日本集中治療医学会雑誌 Vol. 21; no. 4; pp. 328 - 332
Main Authors 加藤, 正哉, 田中, 真生, 米満, 尚史, 木田, 真紀, 川副, 友, 宮本, 恭兵, 中島, 強, 柴田, 尚明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本集中治療医学会 2014
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ISSN1340-7988
1882-966X
DOI10.3918/jsicm.21.328

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Summary:症例は61歳,女性。副腎不全によるショックで入院中,遷延する凝固能異常を背景に明らかな誘因なく特発性後腹膜出血を発症した。出血性ショックとなり凝固能異常の補正と経皮的動脈塞栓術を行った。処置後,膀胱内圧が19 mmHgと高値だったが,腹腔内圧上昇による明らかな臓器障害は認めず,いつでも手術を施行できる体制下で内科的治療を継続とした。以後循環動態は安定化したが,2日後急性腎傷害,循環不全が進行し腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome, ACS)に至ったため,緊急開腹減圧術を施行した。その際,後腹膜ガーゼパッキングとopen abdomen management(OAM)を行い,良好な止血を得た。術後急性腎傷害,循環不全は改善し,翌日には閉腹できた。特発性後腹膜出血での開腹減圧術はタンポナーデ効果消失により再出血のリスクが高いとされるが,後腹膜ガーゼパッキングとOAMの併用により安全に早期の決定的治療を行える可能性がある。
ISSN:1340-7988
1882-966X
DOI:10.3918/jsicm.21.328