アルコール多飲者に発症した劇症型肺炎球菌感染症の1例
症例はアルコール多飲の生活歴をもつ生来健康な48歳の男性。発熱と全身の疼痛を主訴に近医を受診し,低体温と代謝性アシドーシスを認め,当院へ緊急搬送された。意識障害,低血圧,頻呼吸を呈し,四肢および体幹前面に紫斑を認めた。血液検査では肝・腎機能障害,凝固能異常,乳酸アシドーシスの所見があり,腹部CTで脾臓低形成を認めた。敗血症性ショックと播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)と診断した。直ちに抗菌薬投与,人工呼吸器管理,持続的血液濾過透析,輸血などの集学的治療を行ったが,多臓器不全のため来院13時間後に死亡した。剖検の結果,...
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Published in | 日本救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 6; pp. 273 - 278 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本救急医学会
2014
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Subjects | |
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ISSN | 0915-924X 1883-3772 |
DOI | 10.3893/jjaam.25.273 |
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Summary: | 症例はアルコール多飲の生活歴をもつ生来健康な48歳の男性。発熱と全身の疼痛を主訴に近医を受診し,低体温と代謝性アシドーシスを認め,当院へ緊急搬送された。意識障害,低血圧,頻呼吸を呈し,四肢および体幹前面に紫斑を認めた。血液検査では肝・腎機能障害,凝固能異常,乳酸アシドーシスの所見があり,腹部CTで脾臓低形成を認めた。敗血症性ショックと播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)と診断した。直ちに抗菌薬投与,人工呼吸器管理,持続的血液濾過透析,輸血などの集学的治療を行ったが,多臓器不全のため来院13時間後に死亡した。剖検の結果,諸臓器の点状出血と微小血栓,副腎皮質出血,肺うっ血,脾臓低形成を認め,病理学的にはWaterhouse-Friedrichsen症候群,DIC,循環不全と診断された。局所の感染巣は不明であった。その後,入院時血液培養検査から肺炎球菌が検出され,劇症型肺炎球菌感染症と診断した。本邦において劇症型肺炎球菌感染症の剖検例の報告は少ない。劇症型肺炎球菌感染症は,極めて急速に敗血症,DIC,多臓器不全が進行する死亡率の高い疾患であり,今後剖検例を含めた症例報告を集積し,アルコール多飲など劇症化の因子を解明することが重要と考えられる。 |
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ISSN: | 0915-924X 1883-3772 |
DOI: | 10.3893/jjaam.25.273 |