長期間のステロイドホルモン剤の内服にて肝逸脱酵素が正常化していたにも関わらず,HCCを生じた高齢男性AIHの1例

症例は77歳男性.13年前に急性肝障害にて近医受診し,自己免疫性肝炎(AIH)と診断され,プレドニゾロン(PSL)による治療を行い,PSL 5 mgの投与で肝逸脱酵素は正常化していた.当院受診2カ月前の血液検査で腫瘍マーカーの上昇(PIVKA-II 120 mAU/ml)を認め,画像検査で肝S4に径20 mm大の腫瘤性病変を認めたため当院紹介となった.腹部血管造影検査で単発の肝細胞癌(HCC)と診断され,肝動脈塞栓術施行後,肝予備能はChild Aで,ICG(15)が10.2%と比較的良好なため追加治療として外科的にS4部分切除術が施行された.切除標本の病理組織は中分化型肝細胞癌で,背景肝は軽...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in肝臓 Vol. 54; no. 9; pp. 620 - 627
Main Authors 朝井, 章, 竹下, 篤, 中村, 憲, 福西, 新弥, 大濱, 日出子, 山本, 和宏, 樋口, 和秀, 筋師, 徹也, 土本, 雄亮, 津田, 泰宏, 林, 道廣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2013
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.54.620

Cover

More Information
Summary:症例は77歳男性.13年前に急性肝障害にて近医受診し,自己免疫性肝炎(AIH)と診断され,プレドニゾロン(PSL)による治療を行い,PSL 5 mgの投与で肝逸脱酵素は正常化していた.当院受診2カ月前の血液検査で腫瘍マーカーの上昇(PIVKA-II 120 mAU/ml)を認め,画像検査で肝S4に径20 mm大の腫瘤性病変を認めたため当院紹介となった.腹部血管造影検査で単発の肝細胞癌(HCC)と診断され,肝動脈塞栓術施行後,肝予備能はChild Aで,ICG(15)が10.2%と比較的良好なため追加治療として外科的にS4部分切除術が施行された.切除標本の病理組織は中分化型肝細胞癌で,背景肝は軽度の炎症性細胞浸潤と線維化を認めた.長期間のステロイドホルモン剤の投与で肝逸脱酵素が正常化し肝炎が鎮静化していたと考えられる状態で,HCCを生じた高齢男性AIHの一例を経験したので報告する.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.54.620