脂肪肉腫や胃癌リンパ節転移と鑑別を要した後腹膜多発神経節神経腫の1例

患者は67歳,男性.胃癌の精査目的に施行した腹部造影CT検査で右副腎に接する長径40mm大の腫瘍と傍大動脈に長径20mm大の腫瘍を認めた.いずれの腫瘍もCTで辺縁に脂肪を含み中心部は水濃度に近い成分を含む被膜状構造が認められ,MRIでT2WI高信号,DWI高信号を呈し脂肪を含み粘液変性を伴っていた.以上より,後腹膜腫瘍は脂肪肉腫を第一に疑い,傍大動脈腫瘍は胃癌の腹部大動脈周囲リンパ節転移と鑑別を要した.手術においては,まず術中迅速病理診断を行い,傍大動脈腫瘍のリンパ節転移を否定した後に幽門側胃切除術と後腹膜腫瘍摘出術を施行した.病理診断で胃癌はpStage IIBであり,後腹膜腫瘍はともに神経...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 7; pp. 1611 - 1616
Main Authors 足立, 信也, 宮本, 良一, 稲川, 智, 山本, 雅由, 佐野, 直樹, 只野, 惣介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.1611

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Summary:患者は67歳,男性.胃癌の精査目的に施行した腹部造影CT検査で右副腎に接する長径40mm大の腫瘍と傍大動脈に長径20mm大の腫瘍を認めた.いずれの腫瘍もCTで辺縁に脂肪を含み中心部は水濃度に近い成分を含む被膜状構造が認められ,MRIでT2WI高信号,DWI高信号を呈し脂肪を含み粘液変性を伴っていた.以上より,後腹膜腫瘍は脂肪肉腫を第一に疑い,傍大動脈腫瘍は胃癌の腹部大動脈周囲リンパ節転移と鑑別を要した.手術においては,まず術中迅速病理診断を行い,傍大動脈腫瘍のリンパ節転移を否定した後に幽門側胃切除術と後腹膜腫瘍摘出術を施行した.病理診断で胃癌はpStage IIBであり,後腹膜腫瘍はともに神経節神経腫と診断された.神経節神経腫は交感神経節細胞由来の良性腫瘍で多発例の報告は極めてまれであり,悪性腫瘍と併存時にリンパ節転移と鑑別を要した貴重な症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.1611