上腸間膜動脈塞栓症に対し選択的ウロキナーゼ動注療法で救命し得た1例

上腸間膜動脈塞栓症(以下,SMA塞栓症)は,発症後短時間で腸管壊死をきたし広範な腸管切除を要することが多い予後不良な疾患である。症例は69歳男性。既往歴に未治療の心房細動があった。腹痛を主訴に前医を受診し,CTでSMA塞栓症が疑われ当院へ救急搬送された。受診時意識清明,腹壁は軟で,筋性防御は認めなかった。CTでSMA本幹に血栓を認めるも腸管壊死を示唆する所見はみられず,放射線科にコンサルトし,血管造影検査を施行した。同様にSMA本幹に血栓を認め,続いてウロキナーゼによる血栓溶解療法を施行した。トータル72万単位の動注によりSMAの完全な開通が得られた。抗凝固療法を開始し,経過良好で第12病日に...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 38; no. 7; pp. 1235 - 1239
Main Authors 袴田, 健一, 石戸, 圭之輔, 掛端, 伸也, 工藤, 大輔, 三橋, 佑人, 木村, 憲央
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.11.2018
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.38.1235

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Summary:上腸間膜動脈塞栓症(以下,SMA塞栓症)は,発症後短時間で腸管壊死をきたし広範な腸管切除を要することが多い予後不良な疾患である。症例は69歳男性。既往歴に未治療の心房細動があった。腹痛を主訴に前医を受診し,CTでSMA塞栓症が疑われ当院へ救急搬送された。受診時意識清明,腹壁は軟で,筋性防御は認めなかった。CTでSMA本幹に血栓を認めるも腸管壊死を示唆する所見はみられず,放射線科にコンサルトし,血管造影検査を施行した。同様にSMA本幹に血栓を認め,続いてウロキナーゼによる血栓溶解療法を施行した。トータル72万単位の動注によりSMAの完全な開通が得られた。抗凝固療法を開始し,経過良好で第12病日に退院した。熟練した放射線科医と早急な連携を図り,開腹術を回避しつつ救命し得た症例であった。本症に対する血栓溶解療法は,腸管虚血の可逆性を慎重に判断したうえで,緊急手術にも対応可能な施設環境の下で選択すべき治療法である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.38.1235