救急医と遺族の関わり-救急科専門医への全国調査より

【緒言】救急領域における医療者と患者遺族との関わりにつき,医師を対象とした実態調査は行われてこなかった。救急医による遺族対応の実態や意識を明らかにし,救急医療における遺族対応のあり方を検討するため質問紙調査に基づく研究を行った。【対象】2011年2月現在での日本救急医学会救急科専門医3,049名を対象とした。【方法】所属機関内における研究倫理審査委員会の承認の他,倫理的配慮を講じた上で,無記名・自記式・郵送式の質問紙調査法として用い,回答結果につき統計解析を行った。【結果】860名の救急科専門医より回答があり,有効回答率は28.5%であった。遺族対応に積極的に取り組もうとしている医師は,そうで...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 9; pp. 741 - 750
Main Authors 滝沢, 彩子, 吉田, 謙一, 前田, 秀将, 辻村(伊藤), 貴子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2013
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.24.741

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Summary:【緒言】救急領域における医療者と患者遺族との関わりにつき,医師を対象とした実態調査は行われてこなかった。救急医による遺族対応の実態や意識を明らかにし,救急医療における遺族対応のあり方を検討するため質問紙調査に基づく研究を行った。【対象】2011年2月現在での日本救急医学会救急科専門医3,049名を対象とした。【方法】所属機関内における研究倫理審査委員会の承認の他,倫理的配慮を講じた上で,無記名・自記式・郵送式の質問紙調査法として用い,回答結果につき統計解析を行った。【結果】860名の救急科専門医より回答があり,有効回答率は28.5%であった。遺族対応に積極的に取り組もうとしている医師は,そうでない医師に比べ遺族に説明する際の通常の説明項目に配慮が配られていた他,遺族が遺体と対面する際の項目にも幅広く留意がなされている傾向がみられた。調査対象者である救急科専門医のうち4割近くが遺族対応に関する専門の研修を受けたいと回答していた。遺族対応に関する専門研修を望む群では,自殺者,多発・高度損傷受傷者など一定の場合において,遺族への対応に苦慮しているということも判明した。また9割近くの回答者が先輩医師をみて,自然に遺族対応に関して学んでいると回答していた。【結論】専門医レベルであっても,医療現場での遺族対応の困難,苦慮の経験から効果的な研修や学びの場面が望まれており,実践的かつ簡便・効果的な学習形態や研修内容の模索が必要であると考えられる。また遺族対応に積極的に取り組もうとする意識の有無で,実際の対応が改善・向上することも結果から示唆されており,今後は救急医自らが積極的に取り組もうとする姿勢を救急現場において,いかに醸成していくかを検討することも必要であると考えられた。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.24.741