冠動脈バイパス手術における内視鏡的大伏在静脈採取術の初期成績

近年,手術の低侵襲化や機器の進歩もあり,CABG手術における大伏在静脈グラフト(SVG)採取は内視鏡下での採取が普及している.内視鏡下大伏在静脈採取(EVH)は,創部合併症や美容的な面での利点が多いが,中長期において従来の直視下グラフト採取法と比べるとグラフトの開存率が低下するとの報告もあり,まだその評価は定まっていないのが現状である.当院でも2011年4月以降,EVHを積極的に導入しており,その初期成績を直視下開創採取(OVH)群と比較検討した.対象は2011年4月~2012年12月にCABG手術を施行した115症例で,うち62例がEVH群,53例がOVH群であった.EVH群は男性50例,女...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 42; no. 5; pp. 364 - 368
Main Authors 堤, 泰史, 門田, 治, 大橋, 博和, 吉田, 昇平, 沼田, 智, 山崎, 祥子, 瀬尾, 浩之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2013
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.42.364

Cover

More Information
Summary:近年,手術の低侵襲化や機器の進歩もあり,CABG手術における大伏在静脈グラフト(SVG)採取は内視鏡下での採取が普及している.内視鏡下大伏在静脈採取(EVH)は,創部合併症や美容的な面での利点が多いが,中長期において従来の直視下グラフト採取法と比べるとグラフトの開存率が低下するとの報告もあり,まだその評価は定まっていないのが現状である.当院でも2011年4月以降,EVHを積極的に導入しており,その初期成績を直視下開創採取(OVH)群と比較検討した.対象は2011年4月~2012年12月にCABG手術を施行した115症例で,うち62例がEVH群,53例がOVH群であった.EVH群は男性50例,女性12例で,平均年齢は71.3±7.8歳であった.冠動脈バイパス総吻合数は211カ所であり,そのうちSVGを用いて吻合した109カ所を退院前に冠動脈造影検査または造影CT検査を行ってグラフトの開存性を評価した.EVHによるSVG採取時間は26.0±8.1分で,修復を要する枝ぬけ本数は0.34±0.59本であった.グラフトの早期開存率は95.4%(104/109)であり,創部合併症は1例(1.6%)に皮下血腫を認めた.OVH群ではグラフトの早期開存率は92%(92/100)で,EVH群との間に有意差は認められなかったが(p=0.235),創部合併症においては感染3例,リンパ漏3例,皮下血腫1例の計7例(13.2%)認め,EVH群と比べて有意に多かった(p=0.038).EVHの初期成績は良好で,OVHと比べて美容,創部合併症において優れており有用であると考えられる.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.42.364