先天性左総頸動脈・気管支動脈-肺動脈瘻と左右両冠動脈-肺動脈瘻合併症例の手術経験
先天性冠動脈-肺動脈瘻は珍しい疾患で,心筋虚血症状や瘤化などさまざまな病態を呈する.さらに体血管との連続性をも合併することは非常に稀である.症例は75歳男性で,生来健康であったが,自宅で数10秒の意識消失発作があり近医の神経外科を受診し,異常所見なく,心原性失神を疑われ当院循環器科を受診し精査が行われた.ホルター心電図で洞不全症候群と診断された.冠動脈造影で肺動脈-左右両冠動脈瘻と冠動脈狭窄との診断となった.瘻血管の存在により,冠動脈バイパス手術の適応決定においては苦慮し,通常の冠動脈造影に加え,冠血流予備量比,冠動脈内超音波検査,負荷心筋シンチを用い総合的に判断し,三枝バイパスが必要であると...
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| Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 45; no. 4; pp. 170 - 175 |
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| Main Authors | , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
2016
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| Subjects | |
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| ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
| DOI | 10.4326/jjcvs.45.170 |
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| Summary: | 先天性冠動脈-肺動脈瘻は珍しい疾患で,心筋虚血症状や瘤化などさまざまな病態を呈する.さらに体血管との連続性をも合併することは非常に稀である.症例は75歳男性で,生来健康であったが,自宅で数10秒の意識消失発作があり近医の神経外科を受診し,異常所見なく,心原性失神を疑われ当院循環器科を受診し精査が行われた.ホルター心電図で洞不全症候群と診断された.冠動脈造影で肺動脈-左右両冠動脈瘻と冠動脈狭窄との診断となった.瘻血管の存在により,冠動脈バイパス手術の適応決定においては苦慮し,通常の冠動脈造影に加え,冠血流予備量比,冠動脈内超音波検査,負荷心筋シンチを用い総合的に判断し,三枝バイパスが必要であると判断した.術前のCTアンギオで左総頸動脈・気管支動脈-肺動脈瘻が存在し左右両冠動脈-肺動脈瘻と交通していた.冠動脈バイパス術に加え,冠動脈-肺動脈瘻結紮,肺動脈開口部閉鎖,左総頸動脈-肺動脈瘻と気管支動脈-肺動脈瘻閉鎖,ペースメーカー埋め込み術をあわせて行うこととした.瘻孔開口部を決定するうえで術前のCTアンギオ,術中の心表面エコーは有用であった.あらかじめ,左総頸動脈,気管支動脈から流入する異常血管と瘻血管開口部に流入する異常血管を結紮処理した.心筋保護液注入時,さらに瘻孔開口部を直接圧迫することで,心筋保護液は十分に心筋に行き渡り十分な心停止が得られた.術後CTアンギオでは肺動脈-左右両冠動脈瘻,左総頸動脈・気管支動脈-肺動脈瘻は消失していた.左総頸動脈・気管支動脈-肺動脈瘻と左右両冠動脈-肺動脈瘻の合併症例の手術報告は探しうる限りなく,非常に稀な症例と考え文献的考察を含め報告する. |
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| ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
| DOI: | 10.4326/jjcvs.45.170 |