急性前骨髄球性白血病を併発した肝細胞癌の1例
症例は46歳の男性.1カ月前より全身倦怠感および黄疸が出現したため近医を受診した.血液検査にて末梢血の芽球出現を伴う汎血球減少と黄疸を認めたため,精査・加療目的で当院を紹介受診した.骨髄検査では芽球様細胞(90.2%)を認め,遺伝子検査にてPML-RARA融合遺伝子が検出されたことから,急性前骨髄球性白血病(APL)と診断された.また腹部ダイナミックCTでは,胆管浸潤を伴った多発性肝細胞癌(HCC)が認められた.一過性の胆道出血を認めたものの胆管炎の合併はなかったため,APLに対する治療を優先し,全トランス型レチノイン酸(ATRA)による寛解導入療法を開始した.入院後1カ月の時点でAPLの血液...
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Published in | 肝臓 Vol. 58; no. 3; pp. 176 - 182 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
2017
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Subjects | |
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ISSN | 0451-4203 1881-3593 |
DOI | 10.2957/kanzo.58.176 |
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Summary: | 症例は46歳の男性.1カ月前より全身倦怠感および黄疸が出現したため近医を受診した.血液検査にて末梢血の芽球出現を伴う汎血球減少と黄疸を認めたため,精査・加療目的で当院を紹介受診した.骨髄検査では芽球様細胞(90.2%)を認め,遺伝子検査にてPML-RARA融合遺伝子が検出されたことから,急性前骨髄球性白血病(APL)と診断された.また腹部ダイナミックCTでは,胆管浸潤を伴った多発性肝細胞癌(HCC)が認められた.一過性の胆道出血を認めたものの胆管炎の合併はなかったため,APLに対する治療を優先し,全トランス型レチノイン酸(ATRA)による寛解導入療法を開始した.入院後1カ月の時点でAPLの血液学的完全寛解を確認したため,HCCに対して肝動脈化学塞栓術(TACE)を施行した.その後亜ヒ酸を用いた地固め療法およびATRAによる維持療法を行い,APLは寛解が維持された.一方で,TACEによるHCCの制御は困難であり,経過中に多発性肺転移を認めた.ソラフェニブによる全身化学療法を開始したが,投与開始後1カ月の時点でHCC破裂を来たし,当院受診後11カ月で死亡した. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.58.176 |