上腸間膜動静脈損傷治療の課題

外傷による上腸間膜動脈(以下,SMA)・上腸間膜静脈(以下,SMV)損傷は,発生頻度は少ないものの重篤な出血性ショックの原因となる。2011年からの6年間に当センターで診療した外傷症例6,084例中,開腹止血術が必要であったSMA/V損傷は52例(0.85%,鈍的損傷50例/鋭的損傷2例)で,そのうちFullenによる分類でZone Ⅰ~Ⅲの損傷26例(鈍的損傷24例/鋭的損傷2例)に血管に対する手術操作を要した。SMA損傷は結紮止血し,SMV損傷は可及的に修復するという治療方針によって,6年間で76.9%という救命率を得ることができた。SMA/Vの損傷では,心停止が切迫するような大量の血液流...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 38; no. 4; pp. 609 - 615
Main Authors 中山, 文彦, 山本, 真梨子, 阪本, 太吾, 安松, 比呂志, 益子, 一樹, 松本, 尚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.05.2018
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.38.609

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Summary:外傷による上腸間膜動脈(以下,SMA)・上腸間膜静脈(以下,SMV)損傷は,発生頻度は少ないものの重篤な出血性ショックの原因となる。2011年からの6年間に当センターで診療した外傷症例6,084例中,開腹止血術が必要であったSMA/V損傷は52例(0.85%,鈍的損傷50例/鋭的損傷2例)で,そのうちFullenによる分類でZone Ⅰ~Ⅲの損傷26例(鈍的損傷24例/鋭的損傷2例)に血管に対する手術操作を要した。SMA損傷は結紮止血し,SMV損傷は可及的に修復するという治療方針によって,6年間で76.9%という救命率を得ることができた。SMA/Vの損傷では,心停止が切迫するような大量の血液流出により損傷部へのアプローチが困難な状況下であっても,迅速な止血と腸管虚血・うっ血の制御が求められる。SMA/Vへのアプローチ方法も含めた現時点でのわれわれの治療戦術はこれを達成できていると考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.38.609