重症肝外傷手術におけるグリソン一括処理法の有用性

重症肝外傷症例における初期治療戦略では気道確保・呼吸管理に次いで出血制御による循環管理が優先される。1990年代以降は,我が国においても肝周囲ガーゼパッキングと補完的IVRにより止血を図る戦略が標準的となり治療成績は格段に改善した。しかし,この戦略のみでは救命しえない症例に遭遇することがある。今回われわれはオプション手術の1つとしてグリソン一括処理法の重症肝外傷症例への適用を紹介する。本手技は肝癌に対してより安全かつ簡単に肝切除を行うための工夫として開発された。これまでにわれわれは6例のⅢb型肝損傷に対し,2例はダメージコントロールとして,4例は蘇生的TAE後の急性肝壊死に対する根治的肝切除の...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 39; no. 5; pp. 831 - 837
Main Authors 小林, 慎二郎, 大坪, 毅人, 片山, 真史, 小泉, 哲, 土橋, 篤仁, 小倉, 佑太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.07.2019
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.39.831

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Summary:重症肝外傷症例における初期治療戦略では気道確保・呼吸管理に次いで出血制御による循環管理が優先される。1990年代以降は,我が国においても肝周囲ガーゼパッキングと補完的IVRにより止血を図る戦略が標準的となり治療成績は格段に改善した。しかし,この戦略のみでは救命しえない症例に遭遇することがある。今回われわれはオプション手術の1つとしてグリソン一括処理法の重症肝外傷症例への適用を紹介する。本手技は肝癌に対してより安全かつ簡単に肝切除を行うための工夫として開発された。これまでにわれわれは6例のⅢb型肝損傷に対し,2例はダメージコントロールとして,4例は蘇生的TAE後の急性肝壊死に対する根治的肝切除のために本法を適用した。6例すべて軽快退院され,社会復帰されている。いくつかの問題と制限はあるが,グリソン一括処理法は重症肝外傷における有用な手技の1つとなり得るであろう。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.39.831