非典型的巨大疣贅を呈した非細菌性血栓性心内膜炎の1例

症例は68歳女性.不正性器出血を契機に子宮体癌と診断された.精査目的に行われた造影CTにて30 mm大の左室内腫瘤像および脾梗塞を認め,頭部MRIにて多発性脳梗塞を認めた.心臓腫瘤による全身性の塞栓症を来しており,子宮体癌治療に先行して心臓腫瘤摘出術を行う方針となった.人工心肺下に経中隔アプローチで僧帽弁および弁下組織,左室心内膜に付着した黄白色の血栓様腫瘤を摘出した.病理検査では,腫瘤はフィブリンを主体とした血栓であり炎症所見はほぼなく,非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)と診断した.術後にたこつぼ型心筋症を発症し,原疾患である子宮体癌への治療が遅れた.凝固能亢進の制御ができず,左室内疣贅の再...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 51; no. 4; pp. 231 - 234
Main Authors 片山, 秀幸, 恒吉, 裕史, 和田, 拓己, 下村, 俊太郎, 木村, 崇暢, 瀬戸﨑, 修司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.07.2022
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.51.231

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Summary:症例は68歳女性.不正性器出血を契機に子宮体癌と診断された.精査目的に行われた造影CTにて30 mm大の左室内腫瘤像および脾梗塞を認め,頭部MRIにて多発性脳梗塞を認めた.心臓腫瘤による全身性の塞栓症を来しており,子宮体癌治療に先行して心臓腫瘤摘出術を行う方針となった.人工心肺下に経中隔アプローチで僧帽弁および弁下組織,左室心内膜に付着した黄白色の血栓様腫瘤を摘出した.病理検査では,腫瘤はフィブリンを主体とした血栓であり炎症所見はほぼなく,非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)と診断した.術後にたこつぼ型心筋症を発症し,原疾患である子宮体癌への治療が遅れた.凝固能亢進の制御ができず,左室内疣贅の再発,下肢急性動脈閉塞症や下大静脈血栓症などを来し,子宮体癌に対する積極的介入は困難となった.緩和的治療を行い,POD 36に死亡した.NBTEでは一般に小さな疣贅が多発する傾向にあるとされているが,本症例のように巨大疣贅を呈することもある.凝固能亢進の原因となっている原疾患への治療を行わないかぎりはNBTEの再発があり得るため,速やかな原疾患治療への移行が求められる.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.51.231