骨髄異形成症候群により急速に増大した上顎洞血瘤腫例
血瘤腫は閉鎖腔で出血と器質化が繰り返されて腫瘤が形成される良性疾患である。出血や骨破壊を伴う場合があり,悪性腫瘍との鑑別が必要となる。今回我々は骨髄異形成症候群による血小板減少を合併し,急速に増大した上顎血瘤腫を経験したので報告する。症例は69歳の女性。左鼻出血にてA総合病院耳鼻咽喉科に入院し,退院後も左鼻出血を繰り返し,左頬部腫脹も出現してきため前医受診し,CTにて左上顎洞に骨破壊を伴う陰影を認めた。悪性腫瘍が疑われ,全身麻酔下での生検の方針となった。骨髄異形成症候群による血小板低値(7000/μL)であったため血小板輸血を行ってから生検を施行した。病理診断では血瘤腫が疑われ,当科紹介となっ...
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| Published in | 日本鼻科学会会誌 Vol. 59; no. 2; pp. 146 - 153 |
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| Main Authors | , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本鼻科学会
2020
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0910-9153 1883-7077 |
| DOI | 10.7248/jjrhi.59.146 |
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| Summary: | 血瘤腫は閉鎖腔で出血と器質化が繰り返されて腫瘤が形成される良性疾患である。出血や骨破壊を伴う場合があり,悪性腫瘍との鑑別が必要となる。今回我々は骨髄異形成症候群による血小板減少を合併し,急速に増大した上顎血瘤腫を経験したので報告する。症例は69歳の女性。左鼻出血にてA総合病院耳鼻咽喉科に入院し,退院後も左鼻出血を繰り返し,左頬部腫脹も出現してきため前医受診し,CTにて左上顎洞に骨破壊を伴う陰影を認めた。悪性腫瘍が疑われ,全身麻酔下での生検の方針となった。骨髄異形成症候群による血小板低値(7000/μL)であったため血小板輸血を行ってから生検を施行した。病理診断では血瘤腫が疑われ,当科紹介となった。待機的手術を予定していたが,鼻出血,左頬部腫脹が増悪したため前医に緊急入院した。腫瘍の急速な増大を認め,早期の手術が望ましいと判断され当科に転院となった。濃厚赤血球,濃厚血小板の輸血を施行し,術前血管塞栓術を行ってから,全身麻酔下に鼻外切開にて摘出術を施行した。腫瘤を周囲から剥離していくと眼窩内下壁,中頭蓋窩,上顎骨前壁・後壁の骨欠損を認めた。腫瘤内部には多量の凝血塊を認めた。病理診断では血瘤腫として矛盾しない所見であった。術後3年以上経過しているが,再発は認めていない。出血傾向のある症例の血瘤腫は急速に進行する可能性があり,早期に手術を行う必要があると考えられた。 |
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| ISSN: | 0910-9153 1883-7077 |
| DOI: | 10.7248/jjrhi.59.146 |