高齢者の大腿骨頚部骨折手術 退院後の歩行機能の変動と影響要因
この研究は高齢者の大腿骨頚部骨折手術後の歩行機能について退院後の変動を知ることであり，また歩行機能の改善と低下に影響する要因を明らかにすることを目的とした。 対象は過去11年間（1970―1980）にＴ老人医療センター，整形外科病棟を歩行出来る状態で退院した大腿骨頚部骨折患者231名中生存していた98名であった。現在の歩行機能（独歩，Ｔ杖歩行，歩行器歩行および歩行不能の区分）や日常生活動作能力（食事など８項目）を尋ねる質問を郵送によって回答を得た。また承諾者には面接と観察により資料を得た。歩行機能の変動は退院時と比較し改善，低下を分析した結果は次のとうりであった。 1) 対象の平均年令は8...
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| Published in | 日本看護研究学会雑誌 Vol. 10; no. 3; pp. 3_7 - 3_15 |
|---|---|
| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本看護研究学会
1987
Japan Society of Nursing Research |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 2188-3599 2189-6100 |
| DOI | 10.15065/jjsnr.19870701001 |
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| Abstract | この研究は高齢者の大腿骨頚部骨折手術後の歩行機能について退院後の変動を知ることであり，また歩行機能の改善と低下に影響する要因を明らかにすることを目的とした。 対象は過去11年間（1970―1980）にＴ老人医療センター，整形外科病棟を歩行出来る状態で退院した大腿骨頚部骨折患者231名中生存していた98名であった。現在の歩行機能（独歩，Ｔ杖歩行，歩行器歩行および歩行不能の区分）や日常生活動作能力（食事など８項目）を尋ねる質問を郵送によって回答を得た。また承諾者には面接と観察により資料を得た。歩行機能の変動は退院時と比較し改善，低下を分析した結果は次のとうりであった。 1) 対象の平均年令は82歳（sd 6），男女１：７，一般高齢者と比べ日常の活動性は有意に低いという特徴があった。 2) 歩行機能の出現割合は多いものからＴ杖歩行34.7％，独歩27.6％，歩行不能19.4％，歩行器歩行18.4％であった。 3) 最良歩行機能の時期は，退院後平均7.8ケ月（sd 10）であった。 4) 退院後，歩行機能の改善は，70.5％の人にみとめられた。この出現割合は手術後年による相違のないことが明らかであった。 5) 車椅子使用例の歩行機能は改善と低下に半数づつわかれていた。 6) 骨粗鬆症例の歩行機能は88％に改善がみられた。しかし痴呆症の歩行機能は70％が低下していた。 7) 高齢者の退院後の歩行機能の改善と低下に明らかな影響が見られたのは，日常生活動作能力であった。 以上，結論として高齢者の大腿骨頚部骨折手術後のケアの要締は，歩行機能の改善と日常生活動作の維持に努め，高齢者が人生を充分に活きることに寄与することである。 付 記 この研究の要旨は第13回看護研究学会（東京）で発表した。 また，この研究は（財）東京都老人総合研究所「骨の老化」プロジェクト研究の一環としておこなわれた。 |
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| AbstractList | この研究は高齢者の大腿骨頚部骨折手術後の歩行機能について退院後の変動を知ることであり，また歩行機能の改善と低下に影響する要因を明らかにすることを目的とした。 対象は過去11年間（1970―1980）にＴ老人医療センター，整形外科病棟を歩行出来る状態で退院した大腿骨頚部骨折患者231名中生存していた98名であった。現在の歩行機能（独歩，Ｔ杖歩行，歩行器歩行および歩行不能の区分）や日常生活動作能力（食事など８項目）を尋ねる質問を郵送によって回答を得た。また承諾者には面接と観察により資料を得た。歩行機能の変動は退院時と比較し改善，低下を分析した結果は次のとうりであった。 1) 対象の平均年令は82歳（sd 6），男女１：７，一般高齢者と比べ日常の活動性は有意に低いという特徴があった。 2) 歩行機能の出現割合は多いものからＴ杖歩行34.7％，独歩27.6％，歩行不能19.4％，歩行器歩行18.4％であった。 3) 最良歩行機能の時期は，退院後平均7.8ケ月（sd 10）であった。 4) 退院後，歩行機能の改善は，70.5％の人にみとめられた。この出現割合は手術後年による相違のないことが明らかであった。 5) 車椅子使用例の歩行機能は改善と低下に半数づつわかれていた。 6) 骨粗鬆症例の歩行機能は88％に改善がみられた。しかし痴呆症の歩行機能は70％が低下していた。 7) 高齢者の退院後の歩行機能の改善と低下に明らかな影響が見られたのは，日常生活動作能力であった。 以上，結論として高齢者の大腿骨頚部骨折手術後のケアの要締は，歩行機能の改善と日常生活動作の維持に努め，高齢者が人生を充分に活きることに寄与することである。 付 記 この研究の要旨は第13回看護研究学会（東京）で発表した。 また，この研究は（財）東京都老人総合研究所「骨の老化」プロジェクト研究の一環としておこなわれた。 The purpose of this study was to examine the postrepair ambulation level and factors effecting ambulation for improvement and/or decline of the elderly with femoral neck fracture. The subjects were 98 survivor among of the 321 patients, discharged from the orthopedic department of Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital, Tokyo, during past eleven years. A questionnaire and an interview survey was conducted. Main items of questionnaire were the elderly's present ambulation level (such as full ambulant to no ambulant, 4 levels) and the abilities of daily living (ADL, such as eating, 8 items) Comparative studies were made on the ambulation level between at the time of discharge and the present time. Results: 1) The subjects were characterized by average age 82 years old, one male versus seven female and significantly low level of ADL. 2) There was noted 71% of the improvement and was a significant among each of the postoperative year. 3) Significant factor of effecting the ambulation level was noted in their ADL. Those results imply that in taking care of the elderly with femoral neck fracture, we have to pay attention to their ambulation level and their abilities of daily living, in order to help them live their lives as fully as possible. この研究は高齢者の大腿骨頚部骨折手術後の歩行機能について退院後の変動を知ることであり，また歩行機能の改善と低下に影響する要因を明らかにすることを目的とした。 対象は過去11年間（1970―1980）にＴ老人医療センター，整形外科病棟を歩行出来る状態で退院した大腿骨頚部骨折患者231名中生存していた98名であった。現在の歩行機能（独歩，Ｔ杖歩行，歩行器歩行および歩行不能の区分）や日常生活動作能力（食事など８項目）を尋ねる質問を郵送によって回答を得た。また承諾者には面接と観察により資料を得た。歩行機能の変動は退院時と比較し改善，低下を分析した結果は次のとうりであった。 1) 対象の平均年令は82歳（sd 6），男女１：７，一般高齢者と比べ日常の活動性は有意に低いという特徴があった。 2) 歩行機能の出現割合は多いものからＴ杖歩行34.7％，独歩27.6％，歩行不能19.4％，歩行器歩行18.4％であった。 3) 最良歩行機能の時期は，退院後平均7.8ケ月（sd 10）であった。 4) 退院後，歩行機能の改善は，70.5％の人にみとめられた。この出現割合は手術後年による相違のないことが明らかであった。 5) 車椅子使用例の歩行機能は改善と低下に半数づつわかれていた。 6) 骨粗鬆症例の歩行機能は88％に改善がみられた。しかし痴呆症の歩行機能は70％が低下していた。 7) 高齢者の退院後の歩行機能の改善と低下に明らかな影響が見られたのは，日常生活動作能力であった。 以上，結論として高齢者の大腿骨頚部骨折手術後のケアの要締は，歩行機能の改善と日常生活動作の維持に努め，高齢者が人生を充分に活きることに寄与することである。 付 記 この研究の要旨は第13回看護研究学会（東京）で発表した。 また，この研究は（財）東京都老人総合研究所「骨の老化」プロジェクト研究の一環としておこなわれた。 |
| Author | 遠藤, 千恵子 |
| Author_FL | Endo Chieko |
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| Copyright | 1987 一般社団法人 日本看護研究学会 |
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| DOI | 10.15065/jjsnr.19870701001 |
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| DocumentTitleAlternate | POSTREPAIR AMBULATION LEVEL AND FACTORS EFFECTING AMBULATION OF THE ELDERLY WITH FEMORAL NECK FRACTURE |
| DocumentTitle_FL | POSTREPAIR AMBULATION LEVEL AND FACTORS EFFECTING AMBULATION OF THE ELDERLY WITH FEMORAL NECK FRACTURE |
| EISSN | 2189-6100 |
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| Issue | 3 |
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| PublicationTitle | 日本看護研究学会雑誌 |
| PublicationTitleAlternate | 日本看護研究学会雑誌 |
| PublicationTitle_FL | Journal of Japan Society of Nursing Research 日本看護研究学会雑誌 |
| PublicationYear | 1987 |
| Publisher | 一般社団法人 日本看護研究学会 Japan Society of Nursing Research |
| Publisher_xml | – name: 一般社団法人 日本看護研究学会 – name: Japan Society of Nursing Research |
| References | 4) 南沢郁雄他 高齢者大腿骨頚部骨折治療の問題点，手術Vol.30 no3 1986 10) 末森国子他 大腿骨頚部骨折で保存的療法をうけている患者の看護 看護技術Vol.25 no4 1979 7) 牛尾千歳他 老人における大腿骨頚部骨折患者の看護とリハビリテーション 第８回日本看護学会集録 成人看護289－392 1977 2) 門馬 満他 大腿骨頚部骨折の治療よりみた老人整形外科の問題点，整形，災害外科Vol.26 no12 1983 12) 太 良子他 老人が家族の一員として受け入れられるための継続看護をめざして 第12回日本看護学会集録 成人看護53－55 1981 3) 福地正行他 高齢者における大腿骨頚部骨折の治療上の問題点，整形，災害外科Vol.26 no12 1978 8) 永瀬富美子他 大腿骨頚部骨折患者の継続看護をめざして 第９回日本看護学会集録 成人看護274－277 1978 14) 寺本奈智子他 早期社会復帰を目指したADL拡大のためのアプローチ 月刊ナーシングVol.3 no3 44－50 1983 16) 伊藤恵子他 変形性膝関節症，虚血性心疾患をもった老人の大腿骨頚部骨折患者の看護 第17回日本看護学会集録 成人看護68－70 1986 1) 軽部俊二他 老人の大腿骨頚部骨折治療中の合併症とその対策。災害医学Vol.21 no3 1978 11) 鷲田初枝他 大腿骨頚部骨折の老人の看護 第12回日本看護学会集録 成人看護90－92 1981 15) 吉田京子他 大腿骨頚部骨折患者のベットサイドリハビリテーション プログラムを作成して 第15回日本看護学会集録 成人看護 190－192 1984 5) 伊藤邦臣他 大腿骨頚部骨折の骨折型と骨粗鬆症の関連およびその治療，整形，災害外科Vol.29 no4 1986 13) 可児成子他 事例を通してみる大腿骨頚部骨折患者の看護 クリニカルスタディVol.3 no3 28－40 1978 17) 長谷川真美他 高齢の大腿骨頚部骨折患者の標準的看護経過－看護文献の事例とT老人医療センターの事例の比較， 埼玉県衛生短期大学紀要Vol.12 1987 6) 藤原真理他 視力障害のある大腿骨頚部骨折患者のリハビリテーション看護 第５回日本看護学会集録 成人看護276－278 1974 9) 輿那原明子他 老人ホームに帰る老人のリハビリテーションを行って 第９回日本看護学会集録 成人看護226－227 1978 |
| References_xml | – reference: 2) 門馬 満他 大腿骨頚部骨折の治療よりみた老人整形外科の問題点，整形，災害外科Vol.26 no12 1983 – reference: 4) 南沢郁雄他 高齢者大腿骨頚部骨折治療の問題点，手術Vol.30 no3 1986 – reference: 3) 福地正行他 高齢者における大腿骨頚部骨折の治療上の問題点，整形，災害外科Vol.26 no12 1978 – reference: 9) 輿那原明子他 老人ホームに帰る老人のリハビリテーションを行って 第９回日本看護学会集録 成人看護226－227 1978 – reference: 10) 末森国子他 大腿骨頚部骨折で保存的療法をうけている患者の看護 看護技術Vol.25 no4 1979 – reference: 1) 軽部俊二他 老人の大腿骨頚部骨折治療中の合併症とその対策。災害医学Vol.21 no3 1978 – reference: 13) 可児成子他 事例を通してみる大腿骨頚部骨折患者の看護 クリニカルスタディVol.3 no3 28－40 1978 – reference: 6) 藤原真理他 視力障害のある大腿骨頚部骨折患者のリハビリテーション看護 第５回日本看護学会集録 成人看護276－278 1974 – reference: 16) 伊藤恵子他 変形性膝関節症，虚血性心疾患をもった老人の大腿骨頚部骨折患者の看護 第17回日本看護学会集録 成人看護68－70 1986 – reference: 14) 寺本奈智子他 早期社会復帰を目指したADL拡大のためのアプローチ 月刊ナーシングVol.3 no3 44－50 1983 – reference: 5) 伊藤邦臣他 大腿骨頚部骨折の骨折型と骨粗鬆症の関連およびその治療，整形，災害外科Vol.29 no4 1986 – reference: 11) 鷲田初枝他 大腿骨頚部骨折の老人の看護 第12回日本看護学会集録 成人看護90－92 1981 – reference: 17) 長谷川真美他 高齢の大腿骨頚部骨折患者の標準的看護経過－看護文献の事例とT老人医療センターの事例の比較， 埼玉県衛生短期大学紀要Vol.12 1987 – reference: 7) 牛尾千歳他 老人における大腿骨頚部骨折患者の看護とリハビリテーション 第８回日本看護学会集録 成人看護289－392 1977 – reference: 15) 吉田京子他 大腿骨頚部骨折患者のベットサイドリハビリテーション プログラムを作成して 第15回日本看護学会集録 成人看護 190－192 1984 – reference: 8) 永瀬富美子他 大腿骨頚部骨折患者の継続看護をめざして 第９回日本看護学会集録 成人看護274－277 1978 – reference: 12) 太 良子他 老人が家族の一員として受け入れられるための継続看護をめざして 第12回日本看護学会集録 成人看護53－55 1981 |
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