顎裂部自家腸骨海綿骨移植術における採骨部の術後創部状態はRohrer Indexと相関する

小児期の口唇裂口蓋裂患児に対する顎裂部への自家腸骨海綿骨移植術は,一般的な治療法として広く行われている。腸骨採取部位の軟組織の厚みや腸骨稜の突出は術後の創部緊張に影響し,創治癒に影響すると思われる。そこで本研究では,小児の肥満度と腸骨採取部の術後創部状態の相関を明らかにするため,創部状態の評価およびRohrer Index(RI:体重(kg)/身長(cm)3×107)との相関を調べた。2009年から2016年までに当科で顎裂部腸骨海綿骨移植術を行ったCLP患者62名(72側,手術時平均年齢10.6歳)を対象とした。術後3ヶ月以降の創部写真を用いて評価者3名による創部状態の評価を行い(Score...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJournal of Japanese Cleft Palate Association Vol. 43; no. 1; pp. 6 - 11
Main Authors 手塚, 征宏, 中村, 典史, 松永, 和秀, 岐部, 俊郎, 木村, 菜美子, ムハンマド, スバン アミール, 渕上, 貴央
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 2018
Japanese Cleft Palate Association
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate.43.6

Cover

More Information
Summary:小児期の口唇裂口蓋裂患児に対する顎裂部への自家腸骨海綿骨移植術は,一般的な治療法として広く行われている。腸骨採取部位の軟組織の厚みや腸骨稜の突出は術後の創部緊張に影響し,創治癒に影響すると思われる。そこで本研究では,小児の肥満度と腸骨採取部の術後創部状態の相関を明らかにするため,創部状態の評価およびRohrer Index(RI:体重(kg)/身長(cm)3×107)との相関を調べた。2009年から2016年までに当科で顎裂部腸骨海綿骨移植術を行ったCLP患者62名(72側,手術時平均年齢10.6歳)を対象とした。術後3ヶ月以降の創部写真を用いて評価者3名による創部状態の評価を行い(Score 1-5),Score 1, 2を創部良好群,Score 4, 5を創部不良群とした。また,各患者の年齢,体重,身長,RIと創部Scoreとの相関をピアソンの相関係数を用いて評価し,創部良好群と創部不良群との間の各項目の数値をt検定にて比較した。  その結果,次の知見を得た。 1.創部状態の評価を行った結果,創部良好群は72側中35〜41側(48.6〜56.9%),創部不良群は19〜24側(26.4〜33.3%)であった。 2.創部良好群の平均RIは125であり,不良群の114よりも有意に高く(p<0.05),RIの高い症例は良好な創痕となることが示された。その他の項目には有意差を認めなかった。創部ScoreとRIとの間には負の中等度相関を認めた。 3.RIが低い症例では腸骨採取部の皮下組織が薄く,縫合閉鎖が困難になるとともに,腸骨稜の突出による皮膚緊張が強くなり,創の治癒に影響を及ぼすと考えられる。従って,RIの低い痩せ型の患児に対しては創部緊張を緩和するために皮下で十分に創縁を引き寄せる必要があると思われる。
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate.43.6