膵管破綻に対する経乳頭的膵管ステント留置術の検討
膵管破綻によって惹起された各種病態症例に対する経乳頭的膵管ステント留置術 (Endoscopic pancreatic stenting: EPS) の有効性と偶発症について検討する.対象は2002年1月から2008年5月までの6年間に昭和大学藤が丘病院でEPSを施行した患者10例.患者年齢の平均は55.8歳 (35~79歳) で, 性別は男性7例に女性3例であった.病態症例の内訳は膵嚢胞6例, 膵性胸水2例, 膵性腹水 (術後内膵液瘻) 1例, 膵管損傷1例であった.4種の病態症例に対してEPS施行後の治療結果より, EPSの有効性と偶発症について検討した. (1) 膵嚢胞症例6例中3例は嚢...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 68; no. 6; pp. 324 - 333 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
28.12.2008
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Subjects | |
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ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.68.324 |
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Summary: | 膵管破綻によって惹起された各種病態症例に対する経乳頭的膵管ステント留置術 (Endoscopic pancreatic stenting: EPS) の有効性と偶発症について検討する.対象は2002年1月から2008年5月までの6年間に昭和大学藤が丘病院でEPSを施行した患者10例.患者年齢の平均は55.8歳 (35~79歳) で, 性別は男性7例に女性3例であった.病態症例の内訳は膵嚢胞6例, 膵性胸水2例, 膵性腹水 (術後内膵液瘻) 1例, 膵管損傷1例であった.4種の病態症例に対してEPS施行後の治療結果より, EPSの有効性と偶発症について検討した. (1) 膵嚢胞症例6例中3例は嚢胞内に, 3例は嚢胞手前の膵管内にステントを留置し得, その結果は嚢胞内にステント留置した2例と膵管内に留置した1例は嚢胞が消失し, 嚢胞内にステント留置した1例と膵管内に留置した2例は嚢胞が消失せず他経路のドレナージによる追加処置を行った. (2) 膵性胸水症例は1例膵管狭窄部位手前の膵管内で, 1例は破綻部位以深の膵管内にステント留置して共に胸水は消失した. (3) 膵性腹水例は残存膵管内に留置して腹水は消失した. (4) 膵管損傷例は破綻部位以深の膵管内にステント留置し膵液の膵外流出を防いだ.10例とも外科的処置を必要しなかった.偶発症は3例にEPS後感染を認め, 2例はステント交換で改善され, 1例はCTガイド下経皮ドレナージで改善した.主膵管と交通性ある膵嚢胞は, 嚢胞腔内でも嚢胞腔より乳頭側の主膵管内にステント留置しても治療効果はある.胸腔ドレナージだけで治療効果のない膵性胸水症例に対し, EPSは主膵管と胸腔の瘻孔閉鎖に有用である.EPSは嚢胞への感染を起こす危険があり, 感染徴候出現時には早期かつ頻回のステント交換が必要な場合がある.膵性腹水 (術後内膵液瘻) , 医原性 (内視鏡操作) による膵液の膵外への漏出に対して, EPSは膵液漏出停止に有効であった.EPSは簡便で大きな合併症を認めない処置であり, まずは試みるべき治療と考えられる. |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.68.324 |