逆行性体外循環を用いず,末梢側から置換する胸腹部大動脈置換術

【目的】胸腹部大動脈手術時の大腿動脈逆行性送血は,粥腫・血栓・細菌塊の逆行性塞栓や,解離性瘤における腹部臓器や脊髄血管のmalperfusionの危険性を有する.大腿動脈逆行送血を行わず,腹部臓器・肋間動脈の選択的灌流を併用し「末梢側から置換していく胸腹部置換術式」の成績を検討する.【対象】2005年 7 月~2007年 2 月に末梢側から置換した胸腹部大動脈瘤連続 7 例(年齢62 ± 12歳,男性 4,女性 3)は,真性瘤 1,解離性瘤 5,敗血症のMRSA感染性仮性瘤 1 例で,Crawford分類 I 型 1,II型 4,III型 2 例であった.【術式】腎動脈下腹部大動脈を遮断し,分...

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Published inJapanese Journal of Vascular Surgery Vol. 16; no. 6; pp. 759 - 765
Main Authors 佐藤, 久, 片山, 雄二, 蒲原, 啓司, 湊, 直樹, 柚木, 純二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 2007
JAPANESE SOCIETY FOR VASCULAR SURGERY
Subjects
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.16.759

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Summary:【目的】胸腹部大動脈手術時の大腿動脈逆行性送血は,粥腫・血栓・細菌塊の逆行性塞栓や,解離性瘤における腹部臓器や脊髄血管のmalperfusionの危険性を有する.大腿動脈逆行送血を行わず,腹部臓器・肋間動脈の選択的灌流を併用し「末梢側から置換していく胸腹部置換術式」の成績を検討する.【対象】2005年 7 月~2007年 2 月に末梢側から置換した胸腹部大動脈瘤連続 7 例(年齢62 ± 12歳,男性 4,女性 3)は,真性瘤 1,解離性瘤 5,敗血症のMRSA感染性仮性瘤 1 例で,Crawford分類 I 型 1,II型 4,III型 2 例であった.【術式】腎動脈下腹部大動脈を遮断し,分枝付graftを腹部大動脈に吻合後,graftより順行性部分体外循環を開始する.遮断を腹腔動脈上に移し,腹部分枝・腰動脈を選択的灌流し(計450~600ml / 分)再建後,順次graftからの灌流に移行する.中枢側大動脈を遮断し,肋間動脈 (T8~12)の選択的灌流(10~20ml / 分 / 1 枝)を行う.Adamkiewicz動脈をMDCTで同定しておき先に再建する.Graft中枢吻合し体外循環離脱後,残りの肋間動脈を再建する.【結果】体外循環時間121 ± 45分.下肢虚血時間70 ± 22分.選択的灌流時間はAdamkiewicz動脈55 ± 44分,腹腔動脈89 ± 65分,上腸間膜動脈80 ± 65分,腎動脈48 ± 41分であった.敗血症のMRSA感染性仮性瘤(透析例)の 1 例が45病日に呼吸不全で死亡した.全例に脊髄障害なく, malperfusionや粥腫・血栓・細菌塊塞栓による臓器障害を認めなかった.【結論】本法は脊髄や腹部臓器保護に長け,逆行送血による臓器塞栓や解離例でのmalperfusionの危険性を除外できるため,胸腹部大動脈置換術の成績向上に貢献できる可能性がある.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.16.759