カロテノイドとヒトの発がんリスクについての最近の研究

がん化学予防に関してβ-カロテンやその他のカロテノイドの影響を検討した近年の疫学的研究を, 総覧し比較した。症例対照研究とコホート研究では, 往々にして異なる結果が得られている。また, β-カロテンやその他のカロテノイドの摂取量に基づいた研究とそれらの血中濃度に基づいた研究の問でも, しばしば異なる結果が得られている。高リスクの被験者において肺がんのリスクを検討した二つの大規模介入研究は, 摂取されたβ-カロテンがリスクを高める物質であるとさえ考えられる結果を示している。全体として, β-カロテンやその他のカロテノイドについて, 化学予防のための成分としてのはっきりとした効果は見られなかった。...

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Published inオレオサイエンス Vol. 7; no. 10; pp. 423 - 436
Main Author 山西, 倫太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本油化学会 2007
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ISSN1345-8949
2187-3461
DOI10.5650/oleoscience.7.423

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Summary:がん化学予防に関してβ-カロテンやその他のカロテノイドの影響を検討した近年の疫学的研究を, 総覧し比較した。症例対照研究とコホート研究では, 往々にして異なる結果が得られている。また, β-カロテンやその他のカロテノイドの摂取量に基づいた研究とそれらの血中濃度に基づいた研究の問でも, しばしば異なる結果が得られている。高リスクの被験者において肺がんのリスクを検討した二つの大規模介入研究は, 摂取されたβ-カロテンがリスクを高める物質であるとさえ考えられる結果を示している。全体として, β-カロテンやその他のカロテノイドについて, 化学予防のための成分としてのはっきりとした効果は見られなかった。がんに対するβ-カロテンや他のカロテノイドの化学予防の潜在力を疫学的に評価するには, それに適した被験者に対して適正な方法論で調査にあたらねばならない。そのような適切な疫学的評価を行うためには, 前もってより詳しい知見を実験によって得ておくべきである。
ISSN:1345-8949
2187-3461
DOI:10.5650/oleoscience.7.423