胸部大動脈ステントグラフト留置と腹部大動脈人工血管置換の同時手術後に遅発性対麻痺を発症した 1 例

症例は67歳,男性.胸部に径93mm,腹部に径72mmの重複大動脈瘤と診断され,当センターに紹介入院となった.虚血性心疾患と慢性腎不全を合併しており,一期的オープン手術は手術侵襲が過大であると判断し,TAAに対するステントグラフト内挿術と,AAAに対するYグラフト置換術を同時に施行した.術後に脊髄ドレナージの閉塞,血圧低下,貧血の進行を認めた.脊髄根動脈を温存したにもかかわらず,手術終了13時間後より遅発性対麻痺が発生し,前脊髄動脈症候群と診断された.輸血,昇圧,脊髄ドレナージの再施行と副腎皮質ステロイド大量投与により症状は改善し,退院時には歩行も可能となった.術後の造影CT検査で,ステントグ...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 17; no. 5; pp. 605 - 610
Main Authors 内藤, 和寛, 川口, 聡, 田中, 正史, 安達, 秀雄, 由利, 康一, 横井, 良彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 25.08.2008
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.17.605

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Summary:症例は67歳,男性.胸部に径93mm,腹部に径72mmの重複大動脈瘤と診断され,当センターに紹介入院となった.虚血性心疾患と慢性腎不全を合併しており,一期的オープン手術は手術侵襲が過大であると判断し,TAAに対するステントグラフト内挿術と,AAAに対するYグラフト置換術を同時に施行した.術後に脊髄ドレナージの閉塞,血圧低下,貧血の進行を認めた.脊髄根動脈を温存したにもかかわらず,手術終了13時間後より遅発性対麻痺が発生し,前脊髄動脈症候群と診断された.輸血,昇圧,脊髄ドレナージの再施行と副腎皮質ステロイド大量投与により症状は改善し,退院時には歩行も可能となった.術後の造影CT検査で,ステントグラフトおよびYグラフトに問題はなかった.術後対麻痺を回避するには,脊髄ドレナージの確実な実施と周術期の貧血,血圧低下を防ぐことが重要であることが示唆された.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.17.605