筆記具・スケーラーにおける把持・動作に関する研究

(緒言) スケーラーの基本的把持法は筆記具の把持が基本と なる執筆状変法把持法である. 先行の歯科衛生学科学生を対象とした研究結果から1),拇指が示指に被さり,握るような持ち方をしている学生が多く,拇指と示指の押圧の小さい学生は前腕回転運動と手指屈伸運動で,第1背側骨間筋(以下FDI)と短母指屈筋(以下FPB)の筋活動量が小さい傾向が認められた.また,正しい持ち方での書字動作のFDIとFPBの筋活動量は日常の持ち方より大きいことから,筆記具を正しく把持することは,拇指と示指を中心に手指の筋肉を強化するトレーニングとなると考えた. 本研究は,筆記具の正しい把持動作のトレーニングがスケーラーの把持...

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Published inThe Bulletin of Chiba Prefectural University of Health Sciences Vol. 10; no. 1; p. 1_115
Main Authors 山中, 紗都, 鈴鹿, 祐子, 麻賀, 多美代, 麻生, 智子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 千葉県立保健医療大学 31.03.2019
Chiba Prefectural University of Health Sciences
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ISSN1884-9326
2433-5533
DOI10.24624/cpu.10.1_1_115

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Summary:(緒言) スケーラーの基本的把持法は筆記具の把持が基本と なる執筆状変法把持法である. 先行の歯科衛生学科学生を対象とした研究結果から1),拇指が示指に被さり,握るような持ち方をしている学生が多く,拇指と示指の押圧の小さい学生は前腕回転運動と手指屈伸運動で,第1背側骨間筋(以下FDI)と短母指屈筋(以下FPB)の筋活動量が小さい傾向が認められた.また,正しい持ち方での書字動作のFDIとFPBの筋活動量は日常の持ち方より大きいことから,筆記具を正しく把持することは,拇指と示指を中心に手指の筋肉を強化するトレーニングとなると考えた. 本研究は,筆記具の正しい把持動作のトレーニングがスケーラーの把持動作(以下,操作)に及ぼす影響について筋電図を用いて検討した.(研究方法) 対象は,某大学歯科衛生学科の学生で研究協力の同意の得られた19名とした. 被験者に対して筆記具を持っている状態の写真撮影を行い,得られた写真により持ち方を分類した. 筋電図の測定には,EMGマスターKM-104(メディエリアサポート企業組合)を用い,FDIとFPBに電極を筋線維と平行に添付し,双極誘導にて導出した. 測定の手順は,基準とする拇指と示指の押圧最大値を測定後,筆記具では日常の持ち方と正しい持ち方でマークシートの塗りつぶし動作(縦方向)を計測,スケーラー(太型・細型)は執筆状変法で把持し,前腕回転運動と手指屈伸運動時の計測を行った. 筆記具の正しい把持によるトレーニングには正しい指の位置にくぼみがあるプニュグリップ(クツワ株式会社)を装着した筆記具を使用し,使用する期間は2ヵ月間で1日の使用時間は記録をさせた.トレーニング終了時には同様に筋電図測定を行った.得られた筋電図はデータ収録・解析システムML846 PowerLab 4/26(バイオリサーチセンター株式会社)を用い,実効値化(RMS)した. 統計解析には,IBM SPSS 20.0J for Windowsを使用し,トレーニング前後の比較はWilcoxonの符号付順位検定,各測定値の相関についてはPearsonの相関係数を用いて解析した.(結果) グリップを装着した筆記具の1日の使用時間は最大4時間,最小30分であり,2ヵ月間の1人あたりの平均使用時間は42分であった. 19名のうち,拇指が筆記具に正しく触れていない学生は12名(63.2%)であり,12名のRMSは,開始時の押圧最大値の平均がFDIは0.304mV±0.109,FPBは0.156mV±0.164であり,終了時は押圧最大値の平均がFDIは0.362mV±0.148,FPBは0.298mV±0.170であった.トレーニング後は,筆記具の日常と正しい把持動作時のFPBのRMSが有意に増加し,細型スケーラー操作時のFDIも有意に増加した. また,細型スケーラーの手指屈伸運動時のFPBの筋活動量が開始前の72.3%から2ヵ月後は51.5%に有意に低下し,太型スケーラーにおいても70.9%から 51.8%に有意に低下した. また,FRBでは正しい持ち方の把持動作とスケーラー操作(前腕回転運動)に相関がみられ(r=0.587),正しい持ち方の把持動作とスケーラー操作(手指屈伸運動)に強い相関がみられた(r=0.841).(考察) トレーニングにより,スケーラー操作で重要である拇指と示指を筆記具に正しく触れて動作を行ったことで,スケーラーを把持して操作するために必要な掌側の凹状,背側の凸状のアーチを保つ筋力の向上に繋がったことが示唆された. また,トレーニング前は,拇指と示指の指先で常に力を入れてスケーラーを把持し操作していたため,特にFPBの筋活動量が高かったが,日常的にグリップ付き筆記具を使用したことで,器具が安定する指の位置を理解し,把持や操作時に力を入れる,緩めるなどのメリハリができ,活動量の低下に繋がったことが示唆された.(倫理規定) 本研究は千葉県立保健医療大学研究等倫理審査委員会の承認(2014-051)を得て実施した.
ISSN:1884-9326
2433-5533
DOI:10.24624/cpu.10.1_1_115