抗菌薬アレルギーにより治療が困難であった胸痛を伴う細菌性肺炎に柴陥湯が奏効した1例

症例は64歳女性で,主訴は発熱,咳嗽である。4日前からの発熱,咳嗽に対し,3日前に柴胡桂枝湯を処方した。その後,胸痛を伴って症状が増悪し,近医での胸部 X 線で右肺の浸潤影,血液検査で炎症反応を認めた。細菌性肺炎に胸膜炎併発の診断であったが,既往に抗菌薬アレルギーがあったため抗菌薬治療を行えず当院へ紹介された。漢方治療の継続希望があり柴陥湯へ転方した。内服後約15分で胸痛が軽減し,4日後には軽度の咳嗽が残存するのみとなり,11日後には炎症反応が鎮静化した。肺炎,胸膜炎に対する漢方治療では随証的に柴胡剤が選択されることが多い。本例では,咳嗽を伴う胸痛を訴えたことから,少陽病の柴胡剤の証に小陥胸湯...

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Published in日本東洋医学雑誌 Vol. 74; no. 1; pp. 25 - 30
Main Authors 矢野, 博美, 貝沼, 茂三郎, 牧, 俊允, 吉永, 亮, 井上, 博喜, 吉村, 彰人, 原田, 直之, 田原, 英一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本東洋医学会 2023
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ISSN0287-4857
1882-756X
DOI10.3937/kampomed.74.25

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Summary:症例は64歳女性で,主訴は発熱,咳嗽である。4日前からの発熱,咳嗽に対し,3日前に柴胡桂枝湯を処方した。その後,胸痛を伴って症状が増悪し,近医での胸部 X 線で右肺の浸潤影,血液検査で炎症反応を認めた。細菌性肺炎に胸膜炎併発の診断であったが,既往に抗菌薬アレルギーがあったため抗菌薬治療を行えず当院へ紹介された。漢方治療の継続希望があり柴陥湯へ転方した。内服後約15分で胸痛が軽減し,4日後には軽度の咳嗽が残存するのみとなり,11日後には炎症反応が鎮静化した。肺炎,胸膜炎に対する漢方治療では随証的に柴胡剤が選択されることが多い。本例では,咳嗽を伴う胸痛を訴えたことから,少陽病の柴胡剤の証に小陥胸湯の方位を併せもつ柴陥湯を処方して著効した。抗菌薬を用いず漢方薬単独で肺炎を治療した臨床報告は少なく,肺炎,胸膜炎に対する漢方治療の有効性を示す一例であると考える。
ISSN:0287-4857
1882-756X
DOI:10.3937/kampomed.74.25