他臓器に未治療癌を有した高齢者に生じた口腔癌に対する治療経験

高齢者では身体各部の悪性疾患に対し, 加療に伴う機能障害や全身的な予備力の低下を勘案し, 積極的な治療を行わずに余命を全うする場合も少なくない。一方, 口腔癌は直視直達が可能な環境で, 患者自身が病期の進行を知ることができ, 治療を行わない場合, 癌の進展により食事や会話が次第に障害され, 生命予後と単純に比較できない大きな不安要素となる。今回, 肺および胃に原発悪性腫瘍で根治性がない未治療高齢症例において, 重複した口腔癌の治療を行った2症例を経験した。症例1は83歳の女性。下顎左側歯肉の腫脹を主訴に来院し, 臨床的に肺癌の口腔転移と診断した。治療は肺癌に根治性がなく終末期緩和医療を行うこと...

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Published inRonen Shika Igaku Vol. 25; no. 3; pp. 322 - 326
Main Authors 田中, 陽一, 外木, 守雄, 山根, 源之, 佐藤, 一道, 神山, 勲, 會田, 貴久, 片倉, 朗, 齋藤, 寛一, 内田, 淳, 伊川, 裕明, 渡邊, 裕, 山内, 智博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年歯科医学会 2010
Japanese Society of Gerodontology
Subjects
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ISSN0914-3866
1884-7323
DOI10.11259/jsg.25.322

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Summary:高齢者では身体各部の悪性疾患に対し, 加療に伴う機能障害や全身的な予備力の低下を勘案し, 積極的な治療を行わずに余命を全うする場合も少なくない。一方, 口腔癌は直視直達が可能な環境で, 患者自身が病期の進行を知ることができ, 治療を行わない場合, 癌の進展により食事や会話が次第に障害され, 生命予後と単純に比較できない大きな不安要素となる。今回, 肺および胃に原発悪性腫瘍で根治性がない未治療高齢症例において, 重複した口腔癌の治療を行った2症例を経験した。症例1は83歳の女性。下顎左側歯肉の腫脹を主訴に来院し, 臨床的に肺癌の口腔転移と診断した。治療は肺癌に根治性がなく終末期緩和医療を行うこととした。しかし診断から1カ月後, 腫瘍の増大により摂食機能障害を認めたため再来院した。QOLの改善を目的に放射線治療を開始し, 局所腫瘍は制御されたが, 放射線治療5カ月後に永眠された。症例2は85歳の男性。食事の際の舌の痛みを主訴に来院。根治性のない胃癌を伴い未治療のまま経過していた。第二癌舌腫瘍は扁平上皮癌であり, 腫瘍増大に伴って摂食困難と出血を認めた。舌腫瘍の切除が可能と判断し, 全身麻酔下に舌部分切除術と縫縮術を行った。術後, 摂食障害や局所再発はなく, 舌癌切除1年後に他病死された。高齢者数の増加とともに重複癌の増加が推測され, 終末期医療のなかで口腔癌の姑息的あるいは根治的切除がQOLの向上に寄与し, 他臓器に未治療の坦癌状態においても口腔癌の治療を検討する意義は少なくないと示唆された。
ISSN:0914-3866
1884-7323
DOI:10.11259/jsg.25.322