中小規模の周産期医療機関に転職した中堅助産師のキャリアニーズの現状とキャリア支援プログラムの考案

(緒言) 令和2年度の千葉県の助産師就業者数は人口10万人当たりの就業者数は全国ワースト2位という現状がある.また就業場所別は,病院は約50%,診療所は約30%弱となっている一方で,出産数は病院と診療所で半数ずつであり,助産師の就業場所の偏在が問題になっている.本学の母性・助産学実習は産科専門病院,産科診療所においても実習を行っており中小規模の周産期医療機関の責任者より,実習指導を担う助産師のキャリア支援を本学に要望する声が上がっている.本研究ではキャリア支援プログラムを考案するために,中小規模の周産期医療機関に転職した助産師のキャリアニーズの現状をインタビューにより明らかにすることを目的とし...

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Published inThe Bulletin of Chiba Prefectural University of Health Sciences Vol. 15; no. 1; p. 1_55
Main Authors 川城, 由紀子, 川村, 紀子, 北川, 良子, 増田, 恵美, 石井, 邦子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 千葉県立保健医療大学 31.03.2024
Chiba Prefectural University of Health Sciences
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ISSN1884-9326
2433-5533
DOI10.24624/cpu.15.1_1_55

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Summary:(緒言) 令和2年度の千葉県の助産師就業者数は人口10万人当たりの就業者数は全国ワースト2位という現状がある.また就業場所別は,病院は約50%,診療所は約30%弱となっている一方で,出産数は病院と診療所で半数ずつであり,助産師の就業場所の偏在が問題になっている.本学の母性・助産学実習は産科専門病院,産科診療所においても実習を行っており中小規模の周産期医療機関の責任者より,実習指導を担う助産師のキャリア支援を本学に要望する声が上がっている.本研究ではキャリア支援プログラムを考案するために,中小規模の周産期医療機関に転職した助産師のキャリアニーズの現状をインタビューにより明らかにすることを目的とした.(研究方法) 対象者は中小規模の周産期医療機関に転職し1~2年前後の中堅助産師とした. 調査はインタビューガイドを用いた半構成化面接を2022年12月から2023年3月に行った.調査内容は基礎的情報(年齢,助産師経験年数,雇用形態),転職前後のキャリアニーズ(現在の施設に転職するまでの経緯,転職を決めた理由,転職した結果希望するキャリアが実現しているか),将来に向けたキャリアニーズ(助産師としてどのようなキャリアを目標としているか,キャリアを発達させるために現在実施していること,キャリアを発達させるために計画している今後の予定),希望するキャリア支援(現在の施設で提供を希望するキャリア支援,外部の機関に希望するキャリア支援)についてである.分析は逐語録から上記に関する語りを抽出し意味内容を損なわずにコード化を行い,類似性や異質性に基づき抽象度を上げカテゴリーを生成した.(結果) 9名の助産師より同意が得られた.助産師経験年数は6~14年,年齢は28~38歳で全員が育児中であり勤務形態は常勤6名,パートが3名であった. 転職前後のキャリアニーズは47のコードから9のサブカテゴリーが生成された.サブカテゴリーは抽象度を上げずにカテゴリーとした.以下カテゴリーを【 】で示す.対象者は【ライフイベントとの両立】,【希望する助産ケアの実施】,【良好な職場環境】,【目標達成】のために転職し,転職後は【WLBが取れている】,【希望する助産ケアが実施できている】,【勤務条件が良い】と希望するキャリアが実現している一方で【希望する助産ケアが実施できていない】,【正職員になれない】と実現不能なニーズもあった. 将来に向けたキャリアニーズでは115のコードから28のサブカテゴリー,7のカテゴリーが生成された.【目標とする助産ケアの実施を目指す】,【助産ケア向上のために勤務中に取り組む】,【学修に取り組む】,【就業を継続する】,【目指す目標がある】,【将来の目標を検討する】など自らの助産師の専門性への向上欲求を実現していく内容である一方,【キャリアアップに向けた取り組みが困難である】現状があった. 希望するキャリア支援は47のコードから16のサブカテゴリー,6のカテゴリーが生成された.【WLBの支援】,【働きやすい人間関係】,【上司のサポート】,【勤務条件の配慮】,【施設内での学修支援】がニーズとして挙げられたが【施設外のキャリア支援へのアクセス困難】な現状があった.(考察) キャリア支援プログラムには,施設内においては就業継続および助産ケア実践のサポートを背景に応じ講じること,誰もが働きやすい職場環境と人間関係の醸成のために上司だけではなく,働いている助産師を含む施設のスタッフ全員で取り組むことが有益であると考えられる.一方で各種研修会や個人の背景に応じたオーダーメイドの研修などは中小規模の施設では非現実的である.そこで施設外のキャリア支援策へアクセスが容易となるよう,学会や看護協会等の外部組織によるオンデマンド研修の充実,生活の中に取り組めるような学修アプリの開発などが有効であると考えられる.(倫理規定) 本研究は千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会にて承認を受け実施した(2021-33).(利益相反) 申告すべきCOI状態はない.
ISSN:1884-9326
2433-5533
DOI:10.24624/cpu.15.1_1_55