Outcome Definition Repository:電子化医療情報データベースを用いた研究における,アウトカム等を特定するためのアルゴリズムの集積・共有のための知識基盤となるレポジトリ
背景:医療情報データベースを用いた研究は,研究以外の目的で収集したデータを研究にて二次的に使用する.研究対象の疾患や曝露はデータベース上に各種コードで記録されるが,これらコードを利用し疾患や曝露などを特定するアウトカム定義の研究上の妥当性は必ずしも十分ではないとされている.現状,アウトカム定義は,各研究者が研究を計画,実施するたびに個別に発案しているが,報告されない,妥当性評価がなされていないなどの課題がある. 我々が行ったこと:医療情報データベースから興味のあるアウトカム等を特定するために研究で用いられた診療に関する各種コードの組み合わせによるアウトカム定義を集積し,研究者間で共有するための...
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          | Published in | 薬剤疫学 Vol. 30; no. 2; pp. 39 - 50 | 
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| Main Authors | , , , , , , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            一般社団法人 日本薬剤疫学会
    
        31.07.2025
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| ISSN | 1342-0445 1882-790X  | 
| DOI | 10.3820/jjpe.30.39 | 
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| Summary: | 背景:医療情報データベースを用いた研究は,研究以外の目的で収集したデータを研究にて二次的に使用する.研究対象の疾患や曝露はデータベース上に各種コードで記録されるが,これらコードを利用し疾患や曝露などを特定するアウトカム定義の研究上の妥当性は必ずしも十分ではないとされている.現状,アウトカム定義は,各研究者が研究を計画,実施するたびに個別に発案しているが,報告されない,妥当性評価がなされていないなどの課題がある. 我々が行ったこと:医療情報データベースから興味のあるアウトカム等を特定するために研究で用いられた診療に関する各種コードの組み合わせによるアウトカム定義を集積し,研究者間で共有するための知識基盤となるウェブベースのデータベース(Outcome Definition Repository;ODR)を,関連する3学会(日本疫学会,日本臨床疫学会,日本薬剤疫学会)の協力を得て構築した.ODR構築にあたっては,Pilot版ODRにて,登録する対象および項目などの要件定義の検討から開始し,日本の医療情報データベースを用いた研究の既報論文のアウトカム定義を入力するユーザー受入テスト(UAT)を実施した.Pilot版ODRで策定されたデータ仕様と構造に基づき,公開版ODRのシステム構築およびUATが行われた.2023年5月より公開版ODRの限定公開を行い,改善に向けた要望や意見を収集した後,2024年4月より本運用を開始し,寄せられた要望に基づきシステム改修を行った.ODRの主要な機能は,アウトカム定義の登録と検索機能であり,2025年3月現在,412論文,3,838のアウトカム定義が登録され,3学会による拠出金により運営されている. 普及と利用促進のための戦略:研究者によるコード定義の登録のモチベーションとして,学会ごとに登録促進のためのインセンティブの設定など工夫を行う必要がある.また,恒常的に維持管理を担う組織の設立および資金源を確保することで,持続的かつ発展的にODRの運用が可能となり,リアルワールドデータを用いる研究の質向上と促進を図ることが可能と考えられる.産官学による協働的支援が望まれる. 結論:ODRは,2024年度より3学会の学会員が利用可能となった.登録されたアウトカム定義の更なる利用と登録推進のための持続可能な運営に向けた取り組みが必要である. | 
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| ISSN: | 1342-0445 1882-790X  | 
| DOI: | 10.3820/jjpe.30.39 |