HPVワクチン接種におけるナッジ・行動経済学
子宮頸がんは女性に最も多く見られるがんの一つである。子宮頸がんの主なリスク要因は,ハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染で,子宮頸がんのほとんどは,一次予防であるHPVワクチン接種と二次予防である子宮頸がん検診(前がん病変の早期発見と早期治療)によって予防可能である。日本では,2010年に中学1年生~高校1年生の女子を対象にした公費助成,2013年に小学6年生~高校1年生の女子を対象にした定期接種が開始されたが,接種後に生じたとされる多様な症状に関する報道があり,厚生労働省は2013年6月に積極的な接種勧奨の一時差し控えを発表した。これは8年5ヵ月継続され,2021年11月によ...
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| Published in | 医療と社会 Vol. 35; no. 1; pp. 61 - 70 |
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| Main Authors | , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
公益財団法人 医療科学研究所
28.04.2025
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0916-9202 1883-4477 |
| DOI | 10.4091/iken.35-61 |
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| Summary: | 子宮頸がんは女性に最も多く見られるがんの一つである。子宮頸がんの主なリスク要因は,ハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染で,子宮頸がんのほとんどは,一次予防であるHPVワクチン接種と二次予防である子宮頸がん検診(前がん病変の早期発見と早期治療)によって予防可能である。日本では,2010年に中学1年生~高校1年生の女子を対象にした公費助成,2013年に小学6年生~高校1年生の女子を対象にした定期接種が開始されたが,接種後に生じたとされる多様な症状に関する報道があり,厚生労働省は2013年6月に積極的な接種勧奨の一時差し控えを発表した。これは8年5ヵ月継続され,2021年11月にようやく積極的な接種勧奨の一時差し控え終了が発表された。2022年4月より実質的な積極的な接種勧奨の再開とキャッチアップ接種が開始された。2013年度以降,接種率が激減しHPVワクチンはほぼ停止状態となった。我々は,娘へのHPVワクチン接種の意思決定は主に母親が行っていることから,母親の意思決定プロセスについて検証を行った。HPVワクチンを「接種しない」意思決定においては,利用可能性ヒューリスティックや確率荷重関数などが影響し,「接種する」意思決定においては近しい人の行動を見たことによる正の「同調効果」などが影響すると考えられた。 |
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| ISSN: | 0916-9202 1883-4477 |
| DOI: | 10.4091/iken.35-61 |