熊本地震における一般避難所と福祉的避難所の深部静脈血栓症検出率の比較
目的:大規模災害後における深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)発症の危険因子は避難所環境により異なる可能性がある.今回我々は2016年 4 月16日(本震)に発生した熊本地震の被災者を対象にDVT検診を実施し,一般避難所と福祉的避難所におけるDVT検出率を比較したので報告する.方法:熊本県阿蘇市,南阿蘇村の避難所において2016年 4 月27日,5 月 3 日, 5 月 4 日の合計 3 日間でDVT検診を実施した.対象者は検診を希望した207名(男性48名,女性159名,平均年齢68.1±16.1歳).全例に問診と血圧測定,下肢静脈超音波検査(新鮮血栓,陳旧性血...
Saved in:
| Published in | 保健医療科学 Vol. 66; no. 6; pp. 620 - 629 |
|---|---|
| Main Authors | , , , , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
国立保健医療科学院
01.12.2017
|
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1347-6459 2432-0722 |
| DOI | 10.20683/jniph.66.6_620 |
Cover
| Summary: | 目的:大規模災害後における深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)発症の危険因子は避難所環境により異なる可能性がある.今回我々は2016年 4 月16日(本震)に発生した熊本地震の被災者を対象にDVT検診を実施し,一般避難所と福祉的避難所におけるDVT検出率を比較したので報告する.方法:熊本県阿蘇市,南阿蘇村の避難所において2016年 4 月27日,5 月 3 日, 5 月 4 日の合計 3 日間でDVT検診を実施した.対象者は検診を希望した207名(男性48名,女性159名,平均年齢68.1±16.1歳).全例に問診と血圧測定,下肢静脈超音波検査(新鮮血栓,陳旧性血栓に分類)を実施し,一般避難所入所群と福祉的避難所入所群に分類してDVT検出率と背景因子を比較した.結果:避難所は10か所のうち一般避難所が 8 か所(156名;男38名,女118名,平均年齢 65.2±16.4歳),福祉的避難所が 2 か所(51名;男10名,女41名,平均年齢 77.0±11.2歳)であった.全被災者の11.1%(23名)にDVTを認めた.一般避難所入所群におけるDVT検出率は10.3%(16名),福祉的避難所入所群におけるDVT検出率は13.7%( 7 名)と有意差はなく(p=0.80),両群ともDVT検出率は10%以上と高値を示した.また一般避難所入所群におけるDVT発症の危険因子は高齢,震災後起立困難,ヒラメ静脈径8mm以上で,福祉的避難所入所群においてはDVT発症の危険因子までは明らかにならなかったものの,DVT陽性者の方が心疾患既往,ヒラメ静脈径8mm以上の割合は高い傾向であった.年齢別のDVT検出率は,一般避難所入所群の75歳以上では23.2%と約 4 人に 1 人と高率で,福祉的避難所入所群の75歳以上では16.6%と 6 人に 1 人の割合であった.結語:一般避難所入所群と福祉的避難所入所群におけるDVT検出率は同等であった.一般避難所は福祉的避難所と異なり介護スタッフは少なく,避難所環境も劣悪であり,高齢者や障害者にとってはDVT発症につながりやすい環境と言える.そのため一般避難所のDVT予防対策は人員配置や環境改善が重要である.また75歳以上の後期高齢者は環境が良い福祉的避難所においても高いDVT検出率であり,特に注意が必要である. |
|---|---|
| ISSN: | 1347-6459 2432-0722 |
| DOI: | 10.20683/jniph.66.6_620 |