薬物性肝障害を契機に発症した遅発性尿素サイクル異常症の一例

患者は80代南アジア人女性.患者は不眠と認知機能低下を主訴に近医を受診した.ドネペジルを処方されたが,徐々に倦怠感および意識混濁を認め,全身に皮疹を伴ったため精査目的に当科へ紹介された.来院時意識レベルはGlasgow Coma Scale(GCS)でE1V3M4であり,血液・生化学検査では肝障害を認めた.頭部単純CT検査では異常所見を認めず,薬剤リンパ球刺激試験(DLST)にてドネペジル陽性であり薬物性肝障害およびそれに伴う意識障害と診断した.被疑薬の中止で肝障害および意識障害は一時的に改善したが,再び意識レベルの低下と血中アンモニア値の上昇を認めた.肝障害が改善したにもかかわらず血中アンモ...

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Published in肝臓 Vol. 66; no. 3; pp. 86 - 92
Main Authors 小林, 康次郎, 松田, 尚久, 毛利, 州秀, 南雲, 秀樹, 大道, 泰子, 荻野, 悠, 向津, 隆規, 岩渕, 桐加, 松井, 哲平, 籾山, 浩一, 永井, 英成, 吉峰, 尚幸, 和久井, 紀貴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 01.03.2025
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.66.86

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Summary:患者は80代南アジア人女性.患者は不眠と認知機能低下を主訴に近医を受診した.ドネペジルを処方されたが,徐々に倦怠感および意識混濁を認め,全身に皮疹を伴ったため精査目的に当科へ紹介された.来院時意識レベルはGlasgow Coma Scale(GCS)でE1V3M4であり,血液・生化学検査では肝障害を認めた.頭部単純CT検査では異常所見を認めず,薬剤リンパ球刺激試験(DLST)にてドネペジル陽性であり薬物性肝障害およびそれに伴う意識障害と診断した.被疑薬の中止で肝障害および意識障害は一時的に改善したが,再び意識レベルの低下と血中アンモニア値の上昇を認めた.肝障害が改善したにもかかわらず血中アンモニア値の上昇を認めたため,アミノ酸代謝異常を疑いアミノ酸分画測定を行ったところ,シトルリン値とアルギニン値の低下とオルニチン値の上昇を確認し,薬物性肝障害を契機に発症した遅発性尿素サイクル異常症と診断した.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.66.86