脳波とfNIRS同時計測によるFlow状態強度の予測

Flowとは、人が活動に完全に没頭し充実感や満足感を得られる状態で、高いパフォーマンスにつながるとされる。しかし、Flow強度を客観的かつ時間連続的に評価する方法論は十分に確立されていない。本研究ではFlow強度を評価する脳活動指標の探索を目的として、健常若年成人15名を対象に3つの難易度の認知課題(テトリス)実行時の脳波と機能的近赤外分光法(fNIRS)の同時計測を行った。被験者による主観的なFlow強度評価と左中側頭部の脳波β波活動との間に有意な負の相関がみられ、高いFlow状態とβ波活動抑制との関連が示された。fNIRSの酸素化ヘモグロビン濃度変化量(HbO)は、運動前野、一次運動野、一...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual62; no. Abstract; p. 302_2
Main Authors 渡邉, 彩希, 鈴木, 達也, 小野, 弓絵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2024
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual62.302_2

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Summary:Flowとは、人が活動に完全に没頭し充実感や満足感を得られる状態で、高いパフォーマンスにつながるとされる。しかし、Flow強度を客観的かつ時間連続的に評価する方法論は十分に確立されていない。本研究ではFlow強度を評価する脳活動指標の探索を目的として、健常若年成人15名を対象に3つの難易度の認知課題(テトリス)実行時の脳波と機能的近赤外分光法(fNIRS)の同時計測を行った。被験者による主観的なFlow強度評価と左中側頭部の脳波β波活動との間に有意な負の相関がみられ、高いFlow状態とβ波活動抑制との関連が示された。fNIRSの酸素化ヘモグロビン濃度変化量(HbO)は、運動前野、一次運動野、一次体性感覚野、背外側前頭前野において、Flowに関連した有意な増加が認められた。さらに、脳波とHbOの安静時からの変化量を指標としてFlow強度の経時的な変化を予測する線形モデルを作成した。計測値と予測値の相関係数は、全被験者共通のモデルで0.53、被験者ごとのモデルでは0.86となりそれぞれ中程度および強い相関関係を示した。脳活動指標によりFlow強度を客観的に評価し、高いFlow状態を示す課題や方法の選択が可能となれば、効率的な作業や学習、教育、リハビリテーションの実現につながると考えられる。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual62.302_2