下垂体神経内分泌腫瘍における術後入院期間の検討

下垂体神経内分泌腫瘍 (pituitary neuroendocrine tumor;PitNET) に対し内視鏡下経蝶形骨洞手術を受ける患者にとって,術前に入院期間が分かることは有益である.そこで我々は,2015 年 4 月から 2023 年 3 月までの間に自施設にて手術を行なった PitNET 症例 72 例を後方視的に解析することで,入院期間ならびに入院期間が長期化する原因について検討した.対象症例の年齢の中央値は 52.0 歳,男女比は 1:1.初発の非機能性 PitNET が47 例,再発の非機能性 PitNET が 11 例,初発の機能性PitNet が 14 例であった.手術時...

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Published in日大医学雑誌 Vol. 82; no. 4; pp. 221 - 226
Main Authors 山室, 俊, 會田, 有美, 吉野, 篤緒
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大学医学会 01.08.2023
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ISSN0029-0424
1884-0779
DOI10.4264/numa.82.4_221

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Summary:下垂体神経内分泌腫瘍 (pituitary neuroendocrine tumor;PitNET) に対し内視鏡下経蝶形骨洞手術を受ける患者にとって,術前に入院期間が分かることは有益である.そこで我々は,2015 年 4 月から 2023 年 3 月までの間に自施設にて手術を行なった PitNET 症例 72 例を後方視的に解析することで,入院期間ならびに入院期間が長期化する原因について検討した.対象症例の年齢の中央値は 52.0 歳,男女比は 1:1.初発の非機能性 PitNET が47 例,再発の非機能性 PitNET が 11 例,初発の機能性PitNet が 14 例であった.手術時間の中央値は 148.0 分,術前の腫瘍長径の中央値は 25.0 mm,Knosp grade の中央値は 3 であった.18 例が下垂体卒中を合併しており,10 例に術前からホルモン補充がなされていた.28 例で術中に髄液漏を認め,19 例で被膜外の全摘出が行われた.術後髄液漏 2 例,残存腫瘍内出血 1 例,摘出不良 1例に対し,同一入院内で再手術が行われた.髄膜炎は 2例,SIADH は 5 例で認められ,それぞれ 3 ~ 4 および6 ~ 7 日目に発症し,いずれも 9 ~11 日目に治療を終了した.術後に持続的なホルモン補充療法が行われた症例は 22 例であった.PitNET 以外に入院期間中に治療を要した疾患として,動眼神経麻痺,脳梗塞,肺炎,肝機能障害があった.術後入院期間(中央値 12.0 日)と,患者背景,腫瘍の大きさや浸潤度,再手術や合併症例について解析したところ,年齢との間に有意な相関関係が認められた ( p < 0.01).また,同一入院内に再手術を行っていること ( p < 0.01),および,入院中に PitNET 以外に治療を要した疾患があったこと ( p < 0.01) が有意に術後入院期間を延長させた.これらの結果から,高齢でなく,PitNET 以外に治療を要する疾患がない症例は,再手術を要する術後合併症が生じなければ,術後 11 日目までに退院を許可できる可能性が示唆された.
ISSN:0029-0424
1884-0779
DOI:10.4264/numa.82.4_221