抗血栓療法継続下での鼠径部切開法による鼠径部ヘルニア手術の安全性

近年,抗血栓薬を内服中の鼠径部ヘルニア患者は増加している.抗血栓薬内服継続下での手術は出血のリスクが高くなる一方,抗血栓薬内服中止下での手術は血栓塞栓症のリスクが高くなる.当院では抗血栓薬内服中の鼠径部ヘルニア患者に対して内服継続下で鼠径部切開法を行っており,その安全性について検討した.対象は2015年8月から2021年12月までに当院で鼠径部ヘルニアに対し鼠径部切開法で手術を施行した1,192例とした.抗血栓薬内服継続群(内服群)225例と抗血栓薬非内服群(非内服群)967例に分け比較検討した.患者背景では,内服群は非内服群より年齢は有意に高く,ASA IIIの症例が有意に多かった.手術成績...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 85; no. 2; pp. 211 - 217
Main Authors 長谷, 諭, 小林, 健, 津村, 裕昭, 髙橋, 信也, 金廣, 哲也, 亀田, 靖子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2024
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.85.211

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Summary:近年,抗血栓薬を内服中の鼠径部ヘルニア患者は増加している.抗血栓薬内服継続下での手術は出血のリスクが高くなる一方,抗血栓薬内服中止下での手術は血栓塞栓症のリスクが高くなる.当院では抗血栓薬内服中の鼠径部ヘルニア患者に対して内服継続下で鼠径部切開法を行っており,その安全性について検討した.対象は2015年8月から2021年12月までに当院で鼠径部ヘルニアに対し鼠径部切開法で手術を施行した1,192例とした.抗血栓薬内服継続群(内服群)225例と抗血栓薬非内服群(非内服群)967例に分け比較検討した.患者背景では,内服群は非内服群より年齢は有意に高く,ASA IIIの症例が有意に多かった.手術成績では手術時間,出血量,術後在院日数,術後血腫は有意に多かったが,Clavien-Dindo分類Grade IIIの出血は有意差は認めなかった.抗血栓薬内服継続下での鼠径部切開法による鼠径部ヘルニア手術は,処置を要する術後出血などの合併症は増加させず安全に施行可能であると考える.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.85.211