専門医に必要な統計の知識と研究デザイン 司会のことば
私ども臨床医は日々の臨床の中でさまざまな疑問をもちつつ診療に携わっている. 私自身, 最初の疑問が"なぜ真珠腫で骨がこわれるの?"というものであった. まず臨床的にどのような症例で耳小骨の破壊が多いのかを調べることから始まった. 炎症耳では骨破壊が進行しやすく, かつ組織学的にも肉芽組織があれば骨破壊が起こることが判った. 以上が臨床研究(観察研究)である. そして次にモルモットを用いた動物実験にとりくんだ. この一連の仕事で"真珠腫性中耳炎における骨破壊機序"というタイトルで博士号を取得した. 臨床研究は, 患者の生活の質の向上を目指して患者に協力を頂...
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| Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 119; no. 7; p. 984 |
|---|---|
| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.07.2016
日本耳鼻咽喉科学会 |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
| DOI | 10.3950/jibiinkoka.119.984 |
Cover
| Abstract | 私ども臨床医は日々の臨床の中でさまざまな疑問をもちつつ診療に携わっている. 私自身, 最初の疑問が"なぜ真珠腫で骨がこわれるの?"というものであった. まず臨床的にどのような症例で耳小骨の破壊が多いのかを調べることから始まった. 炎症耳では骨破壊が進行しやすく, かつ組織学的にも肉芽組織があれば骨破壊が起こることが判った. 以上が臨床研究(観察研究)である. そして次にモルモットを用いた動物実験にとりくんだ. この一連の仕事で"真珠腫性中耳炎における骨破壊機序"というタイトルで博士号を取得した. 臨床研究は, 患者の生活の質の向上を目指して患者に協力を頂き, 病気の原因を明らかにし, 予防・診断・治療方法を開発することを目的とする. "観察研究"と"介入研究(臨床試験)"からなる. 臨床試験の中でも新たに開発された薬や医療機器の安全性や有効性を確かめ, 実際に製品としてヒトに使えることを示すために行うものを"治験"と呼ぶ(自治医科大学臨床研究支援センターホームページより). 前述の私の臨床研究を例にとって研究の流れを考えてみよう. まず臨床研究デザインの構築である. 臨床データを集め, 解析するためには何を対象にするか, また比較対象はなにか, そしてアウトカムは何かを構造化することが第一歩である. 対象は真珠腫で手術を受けた症例. 比較対象は慢性中耳炎で手術を受けた症例. これらの症例の臨床データ, 手術所見, CT所見等を集める. アウトカムは骨破壊がどのような症例でおこっているかを明らかにすること. これらの基本設計図ができあがり研究がスタートする. 次に得られたデータを如何に解析するか, この臨床医学統計なくして臨床研究はありえない. また真珠腫であれば再発に関する情報も重要である. この場合生存時間解析の概念を応用して非再発時間解析も可能となる. さてこれらのデータを基に論文を書く段になると, 自分の結果と過去の報告を比較しながら考察することとなる. エビデンスのある報告を引用する必要が求められる. その際, systematic reviewやmeta-analysisといった手法を用いた論文がエビデンスレベルは最も高い. 本コースでは臨床研究を行う際の基礎的知識を本領域のエクスパートの先生たちから解説していただく. さらに臨床研究における倫理指針に関しても解説を加えたい. これから臨床研究や基礎研究に取り組む先生たちにとって必須事項が満載である. 是非聴講していただきたい. |
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| AbstractList | 私ども臨床医は日々の臨床の中でさまざまな疑問をもちつつ診療に携わっている. 私自身, 最初の疑問が"なぜ真珠腫で骨がこわれるの?"というものであった. まず臨床的にどのような症例で耳小骨の破壊が多いのかを調べることから始まった. 炎症耳では骨破壊が進行しやすく, かつ組織学的にも肉芽組織があれば骨破壊が起こることが判った. 以上が臨床研究(観察研究)である. そして次にモルモットを用いた動物実験にとりくんだ. この一連の仕事で"真珠腫性中耳炎における骨破壊機序"というタイトルで博士号を取得した. 臨床研究は, 患者の生活の質の向上を目指して患者に協力を頂き, 病気の原因を明らかにし, 予防・診断・治療方法を開発することを目的とする. "観察研究"と"介入研究(臨床試験)"からなる. 臨床試験の中でも新たに開発された薬や医療機器の安全性や有効性を確かめ, 実際に製品としてヒトに使えることを示すために行うものを"治験"と呼ぶ(自治医科大学臨床研究支援センターホームページより). 前述の私の臨床研究を例にとって研究の流れを考えてみよう. まず臨床研究デザインの構築である. 臨床データを集め, 解析するためには何を対象にするか, また比較対象はなにか, そしてアウトカムは何かを構造化することが第一歩である. 対象は真珠腫で手術を受けた症例. 比較対象は慢性中耳炎で手術を受けた症例. これらの症例の臨床データ, 手術所見, CT所見等を集める. アウトカムは骨破壊がどのような症例でおこっているかを明らかにすること. これらの基本設計図ができあがり研究がスタートする. 次に得られたデータを如何に解析するか, この臨床医学統計なくして臨床研究はありえない. また真珠腫であれば再発に関する情報も重要である. この場合生存時間解析の概念を応用して非再発時間解析も可能となる. さてこれらのデータを基に論文を書く段になると, 自分の結果と過去の報告を比較しながら考察することとなる. エビデンスのある報告を引用する必要が求められる. その際, systematic reviewやmeta-analysisといった手法を用いた論文がエビデンスレベルは最も高い. 本コースでは臨床研究を行う際の基礎的知識を本領域のエクスパートの先生たちから解説していただく. さらに臨床研究における倫理指針に関しても解説を加えたい. これから臨床研究や基礎研究に取り組む先生たちにとって必須事項が満載である. 是非聴講していただきたい. |
| Author | 飯野, ゆき子 |
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| CorporateAuthor | 東京北医療センター耳鼻咽喉科 |
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