ヒトT細胞白血病ウイルス1型の戦略と病原性

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)はヒトレトロウイルスとして世界で初めて同定され,予後不良な造血器悪性腫瘍である成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)の他,HTLV-1関連脊髄症やHTLV-1ブドウ膜炎などの種々の炎症性疾患を引き起こす.HTLV-1は生きた感染細胞を介してのみ感染するというウイルス学的特徴を有しており,HTLV-1 bZIP factor(HBZ)やtaxに代表される複数のウイルス遺伝子を巧みに利用しながら,次の個体へとその感染を拡大して...

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Published inウイルス Vol. 69; no. 1; pp. 37 - 46
Main Authors 安永, 純一朗, 松岡, 雅雄, 豊田, 康祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ウイルス学会 2019
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ISSN0042-6857
1884-3433
DOI10.2222/jsv.69.37

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Summary:ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)はヒトレトロウイルスとして世界で初めて同定され,予後不良な造血器悪性腫瘍である成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)の他,HTLV-1関連脊髄症やHTLV-1ブドウ膜炎などの種々の炎症性疾患を引き起こす.HTLV-1は生きた感染細胞を介してのみ感染するというウイルス学的特徴を有しており,HTLV-1 bZIP factor(HBZ)やtaxに代表される複数のウイルス遺伝子を巧みに利用しながら,次の個体へとその感染を拡大している.感染の成立後,HTLV-1は感染細胞を増殖・不死化させるとともに,その免疫形質を変容させ,宿主免疫監視機構からの逃避を誘導する.その結果,HTLV-1の戦略の行き過ぎた副産物として,一部の感染者では過剰な炎症・腫瘍化が引き起こされ,HTLV-1関連疾患を発症する.本稿ではHTLV-1の調節遺伝子とその巧妙な制御機構に焦点を当て,最新の知見を交えて概説する.
ISSN:0042-6857
1884-3433
DOI:10.2222/jsv.69.37