大学および附属病院の全面禁煙実施による施設利用者の意識・行動への影響

目的 公立総合大学のキャンパスおよび医学部附属病院の敷地内禁煙化の実施が,施設利用者の喫煙に対する意識および行動に与える影響を検証する。 方法 敷地内全面禁煙実施開始から 1 年半後に,学生,教職員および病院利用者にアンケート調査を行い,全面禁煙実施後の意識•行動の変化について尋ね,喫煙歴および所属による特性を比較した。 結果 全体で3,875部配布し,2,592部を回収した。喫煙率は,医•薬•看護(医療系)学部教職員•学生(所属者)8.1%,非医療系学部所属者17.2%,病院勤務者8.3%,病院利用者16.8%であった。全面禁煙の認知率は,大学および病院勤務者では 9 割近かったのに対し,病...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 58; no. 4; pp. 266 - 273
Main Authors 河邊, 眞好, 鈴木, 貞夫, 小嶋, 雅代, 永谷, 照男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2011
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.58.4_266

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Summary:目的 公立総合大学のキャンパスおよび医学部附属病院の敷地内禁煙化の実施が,施設利用者の喫煙に対する意識および行動に与える影響を検証する。 方法 敷地内全面禁煙実施開始から 1 年半後に,学生,教職員および病院利用者にアンケート調査を行い,全面禁煙実施後の意識•行動の変化について尋ね,喫煙歴および所属による特性を比較した。 結果 全体で3,875部配布し,2,592部を回収した。喫煙率は,医•薬•看護(医療系)学部教職員•学生(所属者)8.1%,非医療系学部所属者17.2%,病院勤務者8.3%,病院利用者16.8%であった。全面禁煙の認知率は,大学および病院勤務者では 9 割近かったのに対し,病院利用者では51%であった。敷地内全面禁煙化による意識の変化について,「特に」と回答した者は全体の3.8%のみであった。全体の55.9%が「喫煙は良くないという時代の流れを痛感した」と回答し,所属•喫煙歴による差はみられなかった。全面禁煙化について,病院利用者は良い点を積極的に評価していたのに対し,非医療系学部所属者では評価が低く,医療系学部•病院勤務者はその中間であった。「医療従事者の喫煙について」は,全体の過半数が「個人の自由」と回答していた。喫煙者に限ると,医療系学部所属者および病院所属者では95%前後が「個人の自由」と回答したのに対し,非医療系学部および病院利用者では喫煙者でも 9 割未満にとどまった。非喫煙者の 6 割が「タバコの健康影響について十分知らされていない」と考えているのに対し,喫煙者では過半数が「十分知らされている」と回答していた。喫煙の害に関する情報発信源として,喫煙者は所属によらず教育機関を第一に挙げた者が多かったのに対し,禁煙者は国•政府を挙げる者が多く,病院利用者の非喫煙•禁煙者では医療機関を挙げた者が多かった。喫煙者の 4 割近くが全面禁煙化後に喫煙本数が減ったと回答したが,実際に全面禁煙化をきっかけに禁煙した者は 4 人のみであった。 結論 キャンパスの全面禁煙化の実施により,施設利用者の意識には一定の変化がみられたが,行動への影響は限定的であった。喫煙に対する意識には所属および喫煙歴による違いが大きく,脱タバコ社会の実現のためには,タバコのあり方について社会全体で大いに議論し,意識の溝を埋めていく過程が不可欠である。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.58.4_266