精神科デイケアの有効性に関する日本と欧米の比較

精神科デイケアに関して既に70年近い歴史を有し,豊富な研究結果が蓄積されている欧米に比べ,日本の研究はまだ少ない。しかし1980年代より日本においても統合失調症(精神分裂病)患者を対象とした,デイケアの有効性に関するいくつかの研究が報告されている。欧米では種々の精神疾患に対してデイケアが試みられており,総合的な精神機能の回復のみならず,感情障害や反社会的行為,薬物依存等に対する効果も報告されているが,日本では統合失調症における陰性症状(感情鈍麻や引きこもり)の改善が中心である。外来治療との比較においては,日本欧米ともに精神症状の改善に対するデイケアの優越性が示されているし,入院治療との比較でも...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 50; no. 6; pp. 485 - 494
Main Authors 吉益, 光一, 清原, 千香子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2003
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.50.6_485

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Summary:精神科デイケアに関して既に70年近い歴史を有し,豊富な研究結果が蓄積されている欧米に比べ,日本の研究はまだ少ない。しかし1980年代より日本においても統合失調症(精神分裂病)患者を対象とした,デイケアの有効性に関するいくつかの研究が報告されている。欧米では種々の精神疾患に対してデイケアが試みられており,総合的な精神機能の回復のみならず,感情障害や反社会的行為,薬物依存等に対する効果も報告されているが,日本では統合失調症における陰性症状(感情鈍麻や引きこもり)の改善が中心である。外来治療との比較においては,日本欧米ともに精神症状の改善に対するデイケアの優越性が示されているし,入院治療との比較でも欧米でほぼ同等の効果が報告されており入院の代替的機能を担うと考えられている。再入院率を効果の指標とした研究では,日本の研究を中心に有効性が指摘されているが,長期間の再入院防止効果の持続には否定的な報告も多い。これらは従来のデイケアの限界性を示しているともいえるが,陰性症状に有効とされる,新しい抗精神病薬が最近相次いで開発されており,これらの薬物との組み合わせによってデイケアの治療効果が今後増大する可能性があり,今後の研究成果が期待される。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.50.6_485