大阪市における C 型肝炎ウイルス検診と肝炎フォローアップ事業の検討

目的 大阪市における C 型肝炎ウイルス(HCV)検診の現況と肝炎フォローアップ事業の有用性を検討したので報告する。 方法 対象は,平成15~17年度の基本健診受診時に,HCV 抗体検査を受けた40歳以上の希望者で,3 年間の総受診者数は83,458人であった。HCV 陽性者を支援するため,肝炎フォローアップ事業を行い,本事業に同意した者には,医療機関からの精密検査結果通知書の返送の有無で,精密検査の受診状況を把握した。結果が未返送の者へは,おおむね 3 か月・6 か月後の 2 回保健師が電話や訪問で受診確認,および受診勧奨を行った。また,精密検査結果通知書と医療機関からの 2 年間の診療継続...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 55; no. 2; pp. 75 - 82
Main Authors 西口, 修平, 松本, 健二, 田守, 昭博, 高橋, 峰子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2008
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.55.2_75

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Summary:目的 大阪市における C 型肝炎ウイルス(HCV)検診の現況と肝炎フォローアップ事業の有用性を検討したので報告する。 方法 対象は,平成15~17年度の基本健診受診時に,HCV 抗体検査を受けた40歳以上の希望者で,3 年間の総受診者数は83,458人であった。HCV 陽性者を支援するため,肝炎フォローアップ事業を行い,本事業に同意した者には,医療機関からの精密検査結果通知書の返送の有無で,精密検査の受診状況を把握した。結果が未返送の者へは,おおむね 3 か月・6 か月後の 2 回保健師が電話や訪問で受診確認,および受診勧奨を行った。また,精密検査結果通知書と医療機関からの 2 年間の診療継続報告書から,医療機関における精密検査の内容や治療方針等を全例把握し,評価を行って,医療機関に対し個別に情報提供を行った。一方,本事業の同意が取れなかった者は,精密検査の結果を把握するのみであった。 結果 HCV 抗体陽性率は,平成15年度が3.9%,平成16年度が3.8%,平成17年度が3.0%と年々低下していた。  肝炎フォローアップ事業の同意率は,平成15年度52.2%,平成16年度56.2%,平成17年度59.1%であった。本事業の同意ありと,同意で精検受診率を比較してみると,平成15年度の同意ありの群で82.6%,同意の群で37.5%,平成16年度の同意ありの群で77.1%,同意の群で37.7%,平成17年度の同意ありの群で78.0%,同意の群で34.3%と,いずれの年度も同意ありの群で有意に高かった(P<0.001: χ2 検定)。  返送された診療情報から,診療情報提供を行った。平成15年度が延べ153件,平成16年度が延べ105件,平成17年度が延べ58件であった。内容では,画像検査の未実施が107件(33.9%)と最も多く,次いで,HCV サブタイプや,定量検査の未実施,最終的なウイルスの有無を確認するための HCV-RNA 定性検査の未実施などが多かった。また,HCV 陽性にもかかわらず,肝機能正常のため,フォロー終了となっているケースが50件(15.8%),HCV-RNA 定性検査が未実施にもかかわらず,フォロー終了となっているケースが15件(4.7%)あり,フォローが必要であるという情報提供を行った。 結論 HCV 陽性者が,適切に精密検査やフォローアップを受けるためには,受診確認や受診勧奨などの支援が有効であり,医療機関に対する情報提供など,幅広く行う必要があると考えられた。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.55.2_75