気候変動適応を踏まえた果樹栽培と土壌のオーバーレイ解析
農業分野において果樹の気候変動適応は最優先事項である。従来,果樹の気候変動適応の環境要因として,主に気温などの気象条件が考えられていたが,地形や土壌などの立地条件も考慮することは不可欠である。本研究では,気候変動適応の観点から,果樹特産地域における果樹栽培別の環境要因の特徴を定量的に明らかにすることを目的とする。対象地域は山梨県中北地域である。航空写真および農地区画単位を参照することにより,9種類(ブドウ・モモ・サクランボ・カキ・リンゴ・田・畑・その他・転用地)の栽培を識別した。地理情報システムを用いて,対象地域における栽培面積と土壌面積のオーバーレイ解析を適用して,果樹栽培と土壌(土壌分類・...
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Published in | 環境科学会誌 Vol. 36; no. 2; pp. 42 - 52 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 環境科学会
31.03.2023
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Subjects | |
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ISSN | 0915-0048 1884-5029 |
DOI | 10.11353/sesj.36.42 |
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Summary: | 農業分野において果樹の気候変動適応は最優先事項である。従来,果樹の気候変動適応の環境要因として,主に気温などの気象条件が考えられていたが,地形や土壌などの立地条件も考慮することは不可欠である。本研究では,気候変動適応の観点から,果樹特産地域における果樹栽培別の環境要因の特徴を定量的に明らかにすることを目的とする。対象地域は山梨県中北地域である。航空写真および農地区画単位を参照することにより,9種類(ブドウ・モモ・サクランボ・カキ・リンゴ・田・畑・その他・転用地)の栽培を識別した。地理情報システムを用いて,対象地域における栽培面積と土壌面積のオーバーレイ解析を適用して,果樹栽培と土壌(土壌分類・土性区分)の関連性を解析した。さらに,不定形な農地のポリゴンデータを定形のメッシュデータに分割するプログラムを作成して,土壌以外の環境要因について栽培別の加重平均値を算出した。解析の結果,対象地域における5つの果樹栽培の面積割合は15.1%である。果樹全体の土壌大群の割合は,黒ボク土が9.5%,低地土が53.1%,褐色森林土が35.2%である。ブドウやカキが褐色森林土,モモとサクランボが低地土,リンゴが黒ボク土の割合がそれぞれ最も高いことがわかった。地域全体の土性区分の割合と比較して,ブドウは表層および下層において強粘質の割合が高いことがわかった。これはブドウがモモに比べて耐湿性と耐乾性が強いため,土性区分が強粘質でも栽培が可能であることが考えられる。また,モモは壌質の割合が高いことがわかった。これはモモがブドウに比べて深根性であるため,土性区分は強粘質より壌質の方が望ましいことが考えられる。平均傾斜角度の加重平均値は,地域全体が3.8度に対して,サクランボが1.6度,ブドウが2.9度,モモが3.0度,カキが3.7度,リンゴが4.8度であり,果樹栽培別に違いが見られた。 |
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ISSN: | 0915-0048 1884-5029 |
DOI: | 10.11353/sesj.36.42 |