ビジュアル・ナラティブの解釈の違いによる言語教師のビリーフの捉え直し

本フォーラムは,ビジュアル・ナラティブの解釈に複数の視点を持ち込むことで,言語教師のビリーフを捉え直すことを目的とした試行的な研究である。本稿では,大学1年生が「英語を勉強する私」というテーマで描いた同一のビジュアル・ナラティブを異なる言語を教える3人の教師が個別に分析し,その解釈を持ち寄り比較することで,各々の言語学習・教育に持つビリーフを相対化した。同一のビジュアル・ナラティブを分析しているにもかからわずその解釈が異なるのは,ロラン・バルトの言う,ビジュアルが持つ「コード化されないイコン的メッセージ」の解釈において,教師の持つビリーフの相違が反映されたためであると考えられる。教師のビリーフ...

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Published in言語文化教育研究 Vol. 21; pp. 262 - 277
Main Authors 水戸, 貴久, 鈴木, 栄, 松﨑, 真日
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 言語文化教育研究学会:ALCE 23.12.2023
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ISSN2188-9600
DOI10.14960/gbkkg.21.262

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Summary:本フォーラムは,ビジュアル・ナラティブの解釈に複数の視点を持ち込むことで,言語教師のビリーフを捉え直すことを目的とした試行的な研究である。本稿では,大学1年生が「英語を勉強する私」というテーマで描いた同一のビジュアル・ナラティブを異なる言語を教える3人の教師が個別に分析し,その解釈を持ち寄り比較することで,各々の言語学習・教育に持つビリーフを相対化した。同一のビジュアル・ナラティブを分析しているにもかからわずその解釈が異なるのは,ロラン・バルトの言う,ビジュアルが持つ「コード化されないイコン的メッセージ」の解釈において,教師の持つビリーフの相違が反映されたためであると考えられる。教師のビリーフを捉えるための方法としては,すでに質問紙調査やインタビューによるナラティブ分析が知られているが,ビジュアル・ナラティブの分析における解釈のずれを肯定的に捉え,複数の解釈の異なりを比較する共同構築的な方法は,自身の内面に根差すビリーフを探る上で有用であると言える。このように,異なる言語を教える教師が解釈を語り合い,ビリーフを捉え直す方法は,教師研修やワークショップにおいても有効であると思われる。
ISSN:2188-9600
DOI:10.14960/gbkkg.21.262