近赤外線分光法を用いた感覚混乱時の直立姿勢制御に関する大脳皮質血流応答の解析 前庭リハビリテーションへの応用

「はじめに」我々人間は, 空間内に於いて, 視覚, 前庭覚, 深部固有知覚の3つの感覚情報を統合することで自己運動認知の安定を保っている. めまいとは, 安静時あるいは運動中に, 自分自身の体と周囲の空間との相互関係・位置関係が乱れていると感じ, 不快感を伴ったときに生じる症状であり, 運動によって生じるこれら3つの感覚入力パターンと, 中枢神経系に記憶された運動から予測される感覚パターンとの間の不一致(感覚混乱)により発生すると考えられている. 感覚混乱の状況が継続すると, 中枢レベルで慣れが生じてきて, 中枢神経系の記憶が書き換えられ, 変化した感覚入力に対応出来るようになる. これが前庭...

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Published inEquilibrium Research Vol. 79; no. 3; pp. 189 - 197
Main Author 髙倉, 大匡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本めまい平衡医学会 30.06.2020
日本めまい平衡医学会
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ISSN0385-5716
1882-577X
DOI10.3757/jser.79.189

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Summary:「はじめに」我々人間は, 空間内に於いて, 視覚, 前庭覚, 深部固有知覚の3つの感覚情報を統合することで自己運動認知の安定を保っている. めまいとは, 安静時あるいは運動中に, 自分自身の体と周囲の空間との相互関係・位置関係が乱れていると感じ, 不快感を伴ったときに生じる症状であり, 運動によって生じるこれら3つの感覚入力パターンと, 中枢神経系に記憶された運動から予測される感覚パターンとの間の不一致(感覚混乱)により発生すると考えられている. 感覚混乱の状況が継続すると, 中枢レベルで慣れが生じてきて, 中枢神経系の記憶が書き換えられ, 変化した感覚入力に対応出来るようになる. これが前庭代償であり, めまいにおける平衡訓練は, 感覚混乱におけるこうした中枢神経系の慣れを促進させるためのもの, と考えられる. 実際の神経機構に於いては, 運動には大脳皮質, 基底核, 脳幹, 小脳, 脊髄などが階層的に働いており, 脳幹・小脳から下位は眼球運動・姿勢歩行制御などの, より自動的な運動制御に, 大脳皮質は予測注意などに基づく随意的な運動制御に関与している.
ISSN:0385-5716
1882-577X
DOI:10.3757/jser.79.189