在宅要介護者の転倒調査
【はじめに】 在宅で暮らす要支援・要介護者の転倒事故に対する実態調査を行った。 【対象】 H13年1月からH17年12月に訪問リハビリを利用した脳血管障害(以下CVA)とパーキンソン病(以下PD)と骨・関節疾患(以下骨疾患)の要支援・要介護者421名を対象とした。 【方法】 リハカルテから年齢、認知症の有無、要介護度、疾患、転倒の有無を調査し、さらに転倒事例については転倒状況、転倒場所、対策状況を調査した。 【結果】 174名(41%)に転倒事故がみられた。転倒群と非転倒群の間で年齢には有意差は認められなかった。また認知症の有無とも関係性は認められなかった。疾患別の転倒発生率はCVA40%、P...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2006; p. 148 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2006
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
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ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2006.0.148.0 |
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Summary: | 【はじめに】 在宅で暮らす要支援・要介護者の転倒事故に対する実態調査を行った。 【対象】 H13年1月からH17年12月に訪問リハビリを利用した脳血管障害(以下CVA)とパーキンソン病(以下PD)と骨・関節疾患(以下骨疾患)の要支援・要介護者421名を対象とした。 【方法】 リハカルテから年齢、認知症の有無、要介護度、疾患、転倒の有無を調査し、さらに転倒事例については転倒状況、転倒場所、対策状況を調査した。 【結果】 174名(41%)に転倒事故がみられた。転倒群と非転倒群の間で年齢には有意差は認められなかった。また認知症の有無とも関係性は認められなかった。疾患別の転倒発生率はCVA40%、PD70%、骨疾患30%、でPDの転倒が多く認められた。要介護度別の転倒発生率は要支援、50%、要介護1、42%、要介護2、54%、要介護3、42%、要介護4、31%、要介護5、27%で介護度が軽度ほど転倒の発生率は高かった。 転倒件数は延べ569件で、複数回転倒率はCVA、骨疾患では50%であるのに対しPDでは70%と転倒を繰り返していた。転倒状況では3疾患いずれも歩行時(238件)が最も多く、次いで作業時(82件)や移乗時(54件)が続いた。転倒場所は3疾患いずれも寝室(172件)が最も多く次いでリビング(83件)、廊下(59件)であった。転倒に対しての対策は87%実施されており、1)転倒予防(住環境整備、筋力増強運動、動作指導)が265件、2)転倒時の対策(衝撃吸収パッド、床材・敷物検討、転び方指導)が4件、3)転倒後の対策(床上立ち上がり指導、介助指導、ブザー携帯)が19件、1)から3)の重複した関わりが65件であった。 【考察】 今回の調査では転倒件数の87%に対策が実施されていたが、そのうち半数は転倒を繰り返していた。これは、我々が行った対策が適切であったのか、その内容や対策の進め方、その後のフォロー体制についてもう一度見直す必要性を感じた。また、歩行時や作業時に転倒が多いのは、利用者ごとに非常に個別性の高い生活行為があること、慣れた環境であるがゆえの油断が関係していることが推察された。したがって転倒予防には1日の生活行為を充分に把握することに加え、本人・家族の生活に対する意向を充分に考慮して関わることが重要であると思われた。その一方で、意向や希望ばかりを優先しすぎると安全性を失い、安全性ばかり追求すれば車椅子上やベット上での生活など抑制となってしまう恐れがある。個々にあったQOLを考え在宅要支援者・要介護者への転倒対策を行うことが重要であると考えられた。 |
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ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2006.0.148.0 |