上部開腹術と下部開腹術の6分間歩行距離と呼吸機能の比較

【はじめに】  平成18年度診療報酬改定によりリハビリテーションの対象疾患が「脳血管疾患等リハビリテーション料」「運動器リハビリテーション料」「呼吸器リハビリテーション料」「心大血管疾患リハビリテーション料」の4つに再編された。そのなかで外科の開腹術の上部開腹術は「呼吸器リハビリテーション料」で算定されるが下部開腹術はこれに含まれていない。下部開腹術においても歩行能力や呼吸機能は低下し、運動療法および呼吸理学療法の適応になると思われる。また、上部開腹術と下部開腹術で歩行能力や呼吸機能の比較をした報告は少なく、下部開腹術が「呼吸器リハビリテーション料」に含まれていないことに疑問が残る。本研究の目...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2007; p. 125
Main Authors 志田, 啓太郎, 有吉, 護, 原田, 直樹, 君原, 啓雄, 平野, 真美, 山本, 絵美理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2007
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2007.0.125.0

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Summary:【はじめに】  平成18年度診療報酬改定によりリハビリテーションの対象疾患が「脳血管疾患等リハビリテーション料」「運動器リハビリテーション料」「呼吸器リハビリテーション料」「心大血管疾患リハビリテーション料」の4つに再編された。そのなかで外科の開腹術の上部開腹術は「呼吸器リハビリテーション料」で算定されるが下部開腹術はこれに含まれていない。下部開腹術においても歩行能力や呼吸機能は低下し、運動療法および呼吸理学療法の適応になると思われる。また、上部開腹術と下部開腹術で歩行能力や呼吸機能の比較をした報告は少なく、下部開腹術が「呼吸器リハビリテーション料」に含まれていないことに疑問が残る。本研究の目的は、上部・下部開腹術施行患者の歩行能力と呼吸機能を調査し、下部開腹術施行患者の運動療法および呼吸理学療法の必要性を検討することである。 【対象】  平成18年2月から平成19年3月までに当院にて上部開腹術を施行された9名(男性5名、女性4名、平均年齢65±16歳)、下部開腹術を施行された15名(男性7名、女性8名、平均年齢73±15歳)。認知症はなく協力の得られる全身状態の安定した患者を対象とした。 【方法】  上部開腹術群と下部開腹術群に分け6分間歩行距離(以下6MD)・呼吸機能(スパイロメーター)・10m歩行スピードを手術前日と術後1週目に測定。また、歩行開始日・歩行自立日・リハ終了日などについても術後何病日かかったか集計した。統計にはpaired t-test および分散分析を用い、全て有意水準5%で検定した。 【結果】  上部開腹術群と下部開腹術郡の6MDにおいて手術前では下部開腹術群の方が歩行距離は有意に短かった。術後1週目では両方とも歩行距離は有意に減少していた。肺活量においても上部開腹術群と下部開腹術群ともに手術前後で有意に低下していた。その他の項目においては上部開腹術群と下部開腹術群および手術前後において有意差は見られなかった。 【考察】  今回の調査では下部開腹術群は手術前から歩行距離が短く、手術後にも歩行距離は減少する結果となった。なぜ下部開腹術群が手術前から歩行距離が短かったのかは今回の調査では明らかに出来なかったが、いずれにせよ下部開腹術群はもともとの歩行能力が低く、手術後の歩行能力と肺活量も低下していることから下部開腹術施行患者への運動療法と呼吸理学療法の必要性が示唆される。
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ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2007.0.125.0