酸素化灌流保存装置を用いた心停止腎移植の報告と、同装置を用いた心停止肝グラフトに対する酸素化灌流の至適条件の検討
背景>臓器不足を補うため心停止ドナーの活用が求められている。移植可能限界にある心停止ドナー腎に対する移植前灌流は、海外では既に積極的に施行されている。本邦でも旭川医大を中心として灌流保存装置を製造し、多施設臨床研究が開始された。我々の施行した心停止腎移植臨床研究の症例と、同等の灌流装置を用いた心停止ドナー肝に対する酸素化灌流の至適条件の検討について報告する。症例>58歳男性。多発性腎嚢胞による慢性腎不全で献腎登録。24年の待機期間を経て、今回心停止腎移植施行。ドナー原疾患はALSで、低酸素状態となってからの死戦期は約4時間30分、温阻血時間12分であった。ドナー腎は当院到着後、灌流液Belze...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s359_3 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2022
The Japan Society for Transplantation |
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.57.Supplement_s359_3 |
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Summary: | 背景>臓器不足を補うため心停止ドナーの活用が求められている。移植可能限界にある心停止ドナー腎に対する移植前灌流は、海外では既に積極的に施行されている。本邦でも旭川医大を中心として灌流保存装置を製造し、多施設臨床研究が開始された。我々の施行した心停止腎移植臨床研究の症例と、同等の灌流装置を用いた心停止ドナー肝に対する酸素化灌流の至適条件の検討について報告する。症例>58歳男性。多発性腎嚢胞による慢性腎不全で献腎登録。24年の待機期間を経て、今回心停止腎移植施行。ドナー原疾患はALSで、低酸素状態となってからの死戦期は約4時間30分、温阻血時間12分であった。ドナー腎は当院到着後、灌流液Belzer MPS液、灌流圧30㎜Hg以下で4℃、2時間の低温酸素化灌流を施行した。術後経過良好で透析離脱、第36病日に退院した。方法と結果>ブタ心停止モデルを低温酸素化灌流群と室温酸素化灌流群の2群に分け、灌流中の胆汁産生量や灌流液中の肝酵素などについて比較した。胆汁産生量は室温群で有意に多かった。灌流液中のLDHは低温群で有意に低値であった。AST、ALT、IL-1βは2群間で有意差を認めなかった。考察>新規灌流装置を用いて心停止腎移植が安全に施行可能であった。今後のドナー腎適応拡大の一助になる可能性がある。今回の心停止肝グラフト灌流実験では、低温酸素化灌流に対する室温酸素化灌流の優位性を示すことはできなかった。さらなる研究が必要である。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.57.Supplement_s359_3 |