デジタルカメラによる投球動作分析-ステップ幅・リリースポイントに着目して

【はじめに】 投球障害を評価する際、投球動作分析は重要な評価の一つである。しかし、動きの速さ、複雑さから分析には経験を要し、症例へのフィードバックも困難となっている。近年、家庭用デジタルカメラによる投球動作分析の報告が多く、またカメラの撮影技術向上によりこれまで確認困難であったリリース位置の確認が可能となってきている。今回、ハイスピード動画撮影を利用し投球動作におけるステップ幅(StepDistance:SD)とリリース位置の関係とコッキング期から加速期の投球相(時間的な割合)を算出し、投球動作分析を行った。 【対象と方法】 対象は熟練野球経験者(投手)1名(男性22歳)であった。研究の意義と...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 23
Main Authors 仲間, 栄二, 新垣, 太樹, 比嘉, 竜二, 宮城, 健次, 目島, 直人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.23.0

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Summary:【はじめに】 投球障害を評価する際、投球動作分析は重要な評価の一つである。しかし、動きの速さ、複雑さから分析には経験を要し、症例へのフィードバックも困難となっている。近年、家庭用デジタルカメラによる投球動作分析の報告が多く、またカメラの撮影技術向上によりこれまで確認困難であったリリース位置の確認が可能となってきている。今回、ハイスピード動画撮影を利用し投球動作におけるステップ幅(StepDistance:SD)とリリース位置の関係とコッキング期から加速期の投球相(時間的な割合)を算出し、投球動作分析を行った。 【対象と方法】 対象は熟練野球経験者(投手)1名(男性22歳)であった。研究の意義と目的を十分に説明し同意を得て行なった。方法は11m先の的に対して軟式ボールを投球し、投球側矢状面より家庭用デジタルカメラ(CASIO EX-FC100、コマ数1/420秒)で撮影した。投球強度は70%を想定し、SDは本人の主観的に行い、通常ステップ(本人が投げやすいステップ)、ステップ小(小さく意識したステップ)、ステップ大(大きく意識したステップ)の3条件で数回の練習を行った上で各2回の撮影を行った。動画データを画像解析ソフトImageJにて、リリースポイント(以下RP)を計測した。投球相の割合は動画データよりコッキング期(非軸脚の膝の最高点~足底接地:以下CP)と加速期(非軸脚の足底接地~リリース:以下AP)の2相を計測し算出した。 【結果】 RPの距離とSDは通常ステップ時を基準とし±で表す。RPの変化はステップ小:-20.4cm(SD-18.2cm)、ステップ大:+2.5cm(SD+12.9cm)であった。CPとAPの投球相の割合(CP+AP%=100%)は通常ステップ:88+12%、ステップ小:86+14%、ステップ大:94+6%であった。 【考察】 結果より通常ステップに比してステップ小ではRPは後方化しているが、SDの短縮値と近似し、投球相の割合の変化が少なく、静止画像での投球側上肢の関節角度の変化も少ないことからステップ幅の変化による投球動作への影響は少ないと考える。ステップ大ではSDの延長値と比して変化が少なく、投球側上肢の関節角度の変化も少ないことから単にステップ幅を延長しただけではRPへの影響は小さいと考える。一方で投球側の割合は大きく変化していることから、量的見解だけでなく投球動作における運動連鎖のタイミングなどの質的見解も重要と考えられる。SDを評価することは投球相の割合が投球障害に関係しているという報告もあることから投球障害に対する有用な客観的なデータになると考えられる。 【おわりに】 投球障害は身体機能とともに投球動作の評価が重要となり、複雑で動きの速い動作分析が求められる。今回は一般的なデジタルカメラで各投球相の動作分析として臨床上簡便に客観的データが得られたため、臨床場面で投球障害に対する客観性のある評価、治療を行うために今後も検証していきたい。
Bibliography:119
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.23.0