矯正歯科治療前後におけるカリエスリスクの臨床的評価
本研究の目的はマルチブラケット装置による矯正治療を終了した患者における動的治療前後でのカリエスリスクの変化を明らかにすることであった。研究対象は2000年から2007年の間に当院を受診した矯正治療患者103人(男性17人、女性86人)であった。初診時平均年齢は平均19.4歳(範囲:8〜51歳)であった。対象者には初診時および動的治療終了時の2時点でカリエスリスク検査を施行した。検査項目は唾液分泌量、唾液緩衝能、ストレプトコッカスミュータンス菌(SM菌)数、ラクトバチルス菌(LB菌)数、1日の飲食回数、プラークの蓄積量、フッ化物配合歯磨剤などフッ化物の使用状況、そしてDMFTの8項目であった。ウ...
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Published in | 北海道矯正歯科学会雑誌 Vol. 36; no. 1; pp. 3 - 12 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北海道矯正歯科学会
2008
Hokkaido Orthodontic Society |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-202X 2432-6747 |
DOI | 10.20760/dokyo.36.1_3 |
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Summary: | 本研究の目的はマルチブラケット装置による矯正治療を終了した患者における動的治療前後でのカリエスリスクの変化を明らかにすることであった。研究対象は2000年から2007年の間に当院を受診した矯正治療患者103人(男性17人、女性86人)であった。初診時平均年齢は平均19.4歳(範囲:8〜51歳)であった。対象者には初診時および動的治療終了時の2時点でカリエスリスク検査を施行した。検査項目は唾液分泌量、唾液緩衝能、ストレプトコッカスミュータンス菌(SM菌)数、ラクトバチルス菌(LB菌)数、1日の飲食回数、プラークの蓄積量、フッ化物配合歯磨剤などフッ化物の使用状況、そしてDMFTの8項目であった。ウィルコクソン符号順位検定の結果から、SM菌数、1日の飲食回数、プラークの蓄積量、フッ化物の使用状況の4つの項目において初診時に比べ動的治療後の判定値が有意に(1%レベル)低下していた。そのほかの項目では治療前後での判定値の有意差は認められなかった。スピアマン順位相関の結果から、両時点ともに有意な相関を示したものは唾液分泌量と唾液緩衝能、SM菌数とLB菌数、SM菌数とプラーク量の3つの組み合わせであった。以上の結果から、矯正治療は同時に患者のカリエスリスクを低減させることが強く示唆された。この結果は不正咬合の形態的、機能的な改善から生じたのみならず、長期の治療期間を通じての患者の口腔清掃に対するモチベーションの向上によるものでもあると考えられる。 |
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ISSN: | 0916-202X 2432-6747 |
DOI: | 10.20760/dokyo.36.1_3 |